月: 2020年9月

創業融資の手続きのながれ2 ~制度融資編~

制度融資で創業融資をうける場合の手続きの流れについてご説明します。
制度融資は中小企業保証協会が融資の保証を行うため、日本政策金融公庫などと比較すると、当事者が多くなることにより、手続きに時間がかかる傾向にあります。

ステップ1 金融機関の決定
制度融資の場合には、中小企業保証協会は保証を行うが、融資を行うのはあくまでも銀行などの金融機関であるため、その融資申請に窓口となる金融機関を決める必要があります。
原則的には金融機関であればメガバンクでも地方銀行でも信用金庫でも選べるのですが、メガバンクの場合には対象としている会社の売上規模が高く、実質的に殆どの創業者の方がメガバンクで融資を受けられるのはなかなか難しいでしょう。また地方銀行や信用金庫などのほうが、その後の追加融資の際などにも面倒見がよく、また創業者への融資も積極的です。まずは地方銀行や信用金庫などとのお付き合いを始めてみることをお勧めします。

ステップ2 相談
選択した金融機関に制度融資を受けたい旨を相談しておきましょう。
日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合と同じですが、窓口での相談の際には登記簿謄本など、事業の概要がわかるものを持参すると、スピーディーに話がすすみます。

ステップ3 申込
作成した申込書類を金融機関か保証協会に提出します。

ステップ4審査
提出した書類を管轄の中小企業保証協会が審査します。
中小企業保証協会の担当が融資の申込みをした会社に出向き、会社が実態などを確認します。ここで保証がOKになれば中小企業保証協会から融資を申し込んだ金融機関に信用保証書が送付され、これを基に金融機関では改めて融資の審査を行、融資の可否を決めます。
中小企業保証協会が融資先に出向く場合、いくつか質問がされますが、ここでどのような質問がされたかはよく覚えておくようにしましょう。その後、万が一、融資の減額や否決がされた場合にはその質問の内容から推測することができることがあります。

ステップ5 結果通知
面談終了後、1週間から10日で結果の通知がきます。殆どの場合はここで通知された金額が融資額となります。さらに追加書類が必要な場合にはこの期間内に連絡がきます。
融資額の減額または融資が否決されることもありますが、ここで重要なことは今後の融資のために融資担当者に減額又は否決の理由を尋ねておくことです。
その問題が改善されれば次の融資はより期待通りの結果となる可能性が高まります。

ステップ6 融資実行
決定された条件に基づいて融資額が銀行に入金されます。
殆どの場合には、実行前に金融機関から融資の可否や金額について連絡がきます。
ここで融資が減額または否決された場合には、今後の融資のために必ずその理由について尋ねましょう。

日本政策金融公庫で融資をうける場合の手続きは【創業融資の手続きのながれ1】をご覧ください。

創業融資の手続きのながれ1 ~日本政策金融公庫編~

日本政策金融公庫編で創業融資をうける場合の手続きの流れについてご説明します。

ステップ1 相談
最寄りの日本政策金融公庫の支店への相談。
登記簿謄本など、事業の概要がわかるものを持参すると、スピーディに話がすすみます。
借入れ申込書や創業計画書などを手渡されますが、こちらはインターネットでもダウンロードできます。
税理士や公認会計士に相談すると、この手続きが省略されることもあります。

ステップ2 申込
借入れ申込書、企業概況書、創業計画書を含むその他の必要書類を持参してご自身の事務所などの所在地を管轄する日本政策金融公庫の窓口に提出します。郵送またはインターネットでも受け付けています。

ステップ3 書類審査及び面談
提出された書類が内部で審査され、しばらくすると面談の予定日の連絡がきます。
提出された書類に基づく面談ですが、追加書類が求められることはしばしばありますので、追加が予想される書類は事前に準備しておくか、すぐに取得できるようにしておきましょう。

ステップ4 結果通知
面談終了後、1週間から10日で結果の通知がきます。殆どの場合はここで通知された金額が融資額となります。さらに追加書類が必要な場合にはこの期間内に連絡がきます。
融資額の減額または融資が否決されることもありますが、ここで重要なことは今後の融資のために融資担当者に減額又は否決の理由を尋ねておくことです。
その問題が改善されれば次の融資はより期待通りの結果となる可能性が高まります。

ステップ5 融資実行
決定された条件に基づいて融資額が銀行に入金されます。

創業融資の手続きのながれ2

金融機関による創業融資のちがい

創業時の融資には日本政策金融公庫の行う「新創業融資」と各都道府県や自治体の制度融資の一部の「創業融資」があります。
この2つの融資の諸条件は変化していってはいるのですが、主な相違と利用上の注意点についてまとめていきます。
各融資の概要などについてはこちらのリンクでご確認ください。
日本政策金融公庫「新創業融資」
都制度融資「創業融資」

主な相違点

①申込み期間
日本政策金融公庫「新創業融資」→開業又は事業開始後税務申告を2期終えるまで
都制度融資「創業」→「開業または事業開始後5年まで」

②雇用創出等の要件
日本政策金融公庫「新創業融資」→あり
都制度融資「創業」→なし
雇用創出とは事業で人を雇うことではありますが、アルバイトやパートを雇う場合などでも要件を満たし、また創業して直後でなくとも近い将来に雇うという場合には問題ありません。

③融資限度額(運転資金)
日本政策金融公庫「新創業融資」→1500万円まで
都制度融資「創業」→・開業前 自己資金に1000万円を加えた額まで(2500万円が限度)
         ・開業後 2500万円まで

④金利
金利はご融資を受ける方や条件によって微妙に変化するので一概にはいえないのですが、
注意すべきは制度融資の場合には信用保証協会への使用保証料が発生するという点です。
もしも金融公庫と制度融資で条件を比較するのであれば、信用保証料の存在も忘れてはいけません。

⑤自己資金要件
日本政策金融公庫「新創業融資」→創業資金の1/10
都制度融資「創業」→なし

まとめ

この相違点だけをみてしまうと、日本政策金融公庫「新創業融資」の方が融資に関する諸条件が厳しいように思われますが、公庫と制度融資では審査基準が異なり、それにより融資の条件も変わってきてしまうので、実際に融資をうけてみないとわからないというのが現場を経験しての率直な感想ではあります。

創業融資を積極的に活用しよう~創業融資のススメ4~

創業される方の80%程度の方は創業時に自己資金をご用意しております。創業にあたって借入などをせずに自己資金だけですませることが理想、と思われている方が多いのではないでしょうか?
しかし「会社のサバイバル能力を高めよう~創造業のススメ3~」でも記載したとおり、日本金融公庫などの創業融資を活用した企業の生存率は平均的な企業の生存率に比べてかなり高い傾向にあります。
理由はいくつかありますが、そのひとつとして自己資金のみで開業することのリスクの高さがあります。
ここでは自己資金のみで開業することのリスクをあげていきます。

①創業後のしばらくの支出は凄い
創業後はまず設備や営業所などの賃貸費用など初期投資などで多額のお金がでていきます。さらに殆どの場合、想定外の支出はつきものです。さらに多くの場合は、創業後すぐには売上があがらず、固定費部分と社長自身の生活費などで赤字が続くでしょう。
売上があがったとしても、入金までは短くても一か月、手形などで支払われた場合にはさらに数か月先ということもしばしばあります。
創業後しばらくのお金の減り方は凄まじいものがあり、最悪の場合には会社の運営に支障をきたしかねないのです。

②創業時は融資を受けやすい
創業時の融資は創業計画や創業者の財務的な健全性などにより評価されます。ただ一度、創業してしまうと、会社の実績などにより審査が行われます。赤字だからお金を借りようとはなかなかいかないのが現実です。金融機関は赤字や資金繰りが厳しい企業への融資は後ろ向きです。
創業計画書どおりに企業が運営できないことも予測しつつ、創業融資などにより資金的なゆとりを持っておくことをぜひおすすめします。

③資金調達のノウハウ
会社を運営していると、大量の資金が必要な場面が必ずあります。設備投資をおこなう、あるいは高額な在庫を抱えなくてはならない場面などです。
こういった場合に資金調達のノウハウをもつことは非常に有用です。
このノウハウがないと、必要になった時には借入が難しい状態であったり、必要なタイミングで資金を用意できなどの弊害が生じるでしょう。
このような問題が生じないためにも、創業融資をうけ、金融機関との付き合いを積み重ねていくことをおすすめしております。

会社のサバイバル能力を高めよう~創業融資のススメ3~

創業されたお客様のなかには「会社って平均で何年くらいもつのですか?」という質問をされる方がおられます。おそらく創業にあたり期待と不安の入り混じったなかでの疑問だったのではないかと思われます。私自身、設立した会社は3年以内に3割の会社が廃業、10年をこえて継続できるのは1割くらいみたいなことを誰から学生時代に友人から聞いた記憶があります。
中小企業庁の2005年時点の中小企業白書をみるかぎり、1年後の存続率が72%、3年後で50%程度、10年後で26%程度ではないかと読みとれます。
ただ私が税理士事務所での勤務時代に創業から関与させて頂きましたお客様を見る限りでは順調なお客様もいらっしゃれば苦しいお客様にいらっしゃいましたが、3年で5割の廃業というのはあまり実感のわかない数字です。ほとんどのお客様は創業融資をご活用されていました。
日本政策金融公庫の「新規開業パネル調査」(2016年12月)というデータを見る限り、日本政策金融公庫が融資をおこなった企業については3年後の生存率が94.5%をこえ、5年後の生存率89.2%という数値となっています。
私の実感としてはこちらの数値のほうが近いように思えます。
何故、日本政策金融公庫から融資をうけた企業の生存率が高いのかというと
まずは事業計画について融資審査という客観的な評価をうけたこと、支出が多い創業期に資金的なゆとりをもてたこと、資金繰りのノウハウを早期に見つけたこと。
この3点が大きいのではないかと推測されます。
やはり企業の末永い繁栄には、綿密なビジネスプランと第三者による客観的な評価、創業時の資金の準備、また創業後の困難な局面を耐えるための資金繰りの知識の早期の取得が必要ではないでしょうか。

創業融資のススメ4

法人設立の注意点

これまで個人事業主としてご商売をされてきて、これから法人としてご商売をされていきたいという方に向けて主要な注意点をまとめてみました。

【1】役員報酬の制限

 役員報酬は会計期間開始の日から3ヵ月以内に決定し、原則としては次の定時株主総会(翌会計期間開始の日から3ヵ月以内)まで変更できません。また法人税法上は登記簿や定款の役員だけではなく実態として役員と同じような立場にある人物も役員としてこの制限をうけることとなります。

 詳しくは、「役員報酬は変えられない!!」、 「特殊!!会社のみなし役員」をご覧になってください。

【2】資金管理

 個人と法人は別人格であるため、法人の資金は明確な管理が求められています。役員の方の報酬は、預金からは毎月同額のお給料が同時期に引き落とさるようにする必要がありますし、会社の口座から引き出した現金が経費などで使いきれず、社長が持つような場合には貸付金として扱われます。
 貸付金として扱われると、法人から役員に対して利息の請求をする必要が生じます。また金融機関に借入などを申し込む際には、役員への貸付などが多額にあることは良い印象をあたえません。

【3】確定申告書の提出期限

 法人の場合には任意の事業年度終了の日から2月以内です。個人の確定申告より15日程度期限が短くなっておりますので、お早めの対応をお願いします。

【4】法人設立又は精算の費用

 株式会社の設立には各種士業への報酬を除いて、一般的に20万円~30万円程度の費用が必要となり、清算の場合にも同程度の費用がかかります。

【5】赤字でも法人住民税均等割が課税される

 法人の場合には赤字でも住民税均等割額がおおむね7万円程度課税されます。(会社の規模により増加する可能性がございます。)

【6】社会保険の負担

 個人事業者の場合には従業員が5人までは健康保険と年金保険への加入は任意ですが、法人は規模に関わらずに健康保険組合と厚生年金保険の加入が義務付けられ、その費用は従業員と折半となります。
 こちらは役員の方も同様です。その場合の保険料は会社負担分と個人負担分を合計すると30%程度となり、一般的には個人で支払う保険料の合計額よりも、会社で支払う保険料の合計額の方が大きいので注意が必要となります。

【7】個人事業の資産を法人へ引継ぐ場合の注意点

 個人事業者であった時に使用していた資産を法人に引継ぐ場合は、贈与、売却または現物出資であっても税法上は譲渡したものとして扱われ、法人又は個人の課税対象となります。

【8】消費税法の納税義務

 基本的には法人の設立後2年間は消費税が課されない免税事業者ですが、法人の設立時の状況または法人の設立後1年間の業績などによっては、そもそも免税事業者になれない若しくは免税事業者である期間が短くなります。
 また設立から2年間免税事業者であっても、ご商売の状況などによっては免税事業者ではないことを選択するほうが有利になる場合がございます。(輸出などの海外取引を行う場合、設立してすぐに多額の設備投資や商品に仕入れを行う場合など)

 詳しくは、「消費税にご用心2 ~消費税の納税義務~」をご覧ください。

まとめ

設立時の法人及び事業主様の状況や、設立後のご予定などについて税理士に
ご相談されることをお勧めいたします。

みんなの創業時の資金調達方法~創業融資のススメ2~

起業時において資金をどのように準備するかというのは全ての起業家にとって悩みの種となります。
2017年度の中小企業庁の中小企業白書及び小規模事業白書では中小企業や小規模事業者の創業期の資金調達先として、自己資金が80%程度、親類や知人などからの借入が35%から40%程度、民間金融機関からの借入が35%から40%程度、政府系金融機関からの借入が25%から28%程度、公的補助金及び助成金などが9%から12.6%程度というデータが示されております。複数回答可能ですので、いくつかの資金調達先を併用されていると考えられますが、自己資金の割合が高いことが伺えます。
しかし自己資金が充分貯まるまで創業を待つということが必ずしも正しいわけではありません。現代のビジネスは非常に早く、タイミングを逃すことは非常に大きな損失となります。またビジネスによっては創業者の年齢が適齢期であるかなどの問題もあります。さらに自己資金が充分貯まったように思えても、事業計画を立ててみると、やはり不足しているということはよくあることです。期待できる事業計画をお持ちであれば創業時の融資をご活用いただくことを積極的にご検討ください。
資金調達の選択肢も従前の「自己資金」、「出資を受ける」、「融資」、「金銭などの贈与を受ける。」などの他に、最近では「クラウドファンディング」や「創業補助金」などといった方法もあります。

創業融資のススメ3

借入は是か非か~創業融資のススメ1~

多くの方がお借入れ又は借金などについてはネガティブな印象をお持ちではないでしょうか?その理由はおそらくは新聞の紙面やニュースで伝えられる「○〇株式会社倒産 負債総額〇〇億円」などという情報などから抱く印象からと思われます。
たしかにいわゆる破産や倒産といわれるものは会社や事業が借入などを含む負債の返済が滞ることで起こります。ですが、そもそも借入の多くは設備投資や新たな事業展開のために行われることが多く、実際のところ金融機関も赤字の補填のための貸付にはネガティブであり、業績が順調なうえでの事業拡大目的の場合には金融機関は積極的に貸付を行ってくれます。
つまり借入とは会社や事業の成長にとって非常に重要な手段です。
ここで借入をうけることのメリットとデメリットを整理していきたいと思います。

デメリット
①元金や利息の返済がある
②借入先によっては高金利で会社の運営を圧迫する
③金融機関との折衝などの業務が生じる
④手元に現金があるのでついつい財布の紐が緩くなる

メリット
①資金にゆとりが生まれる
②積極的な事業展開や投資ができる。
③大きい規模の投資ができるので事業の成長スピードが高まる。
④借入を期日通りに返済していけば金融機関の信用が高まり、より多くの借入を行うことで会社の成長が早まる

私自身は、借入については前向きに検討すべき、と思っております。
まずデメリットで挙げた部分については、②については防ぐ余地があり、③④については会社の対策よってはマイナスとなる効果を抑制もしくむしろ会社の成長につながる部分がおおいと考えるためです。
さらにメリットに挙げた積極的な事業展開や投資、事業の成長スピードの促進はデメリット以上の利益を享受できる、と思われるからです。
特に起業家の方にはこの他の大きなメリットとしては、創業時の創業計画書などで事業の具体的なプランを税理士や金融機関に評価される、借入により必要な資金をそろえることでより早く創業できる、という効果があります。
そのため前向きなご検討をお勧めしております。

創業融資のススメ2

日本政策金融公庫と制度融資 

多くの起業家の方が利用しやすい創業融資として日本政策金融公庫による信用保証協会による保証付きの融資があります。
ここでは日本政策金融公庫と信用保証協会について解説します。

①日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は2008年に複数の政府系金融機関が統合して発足した株式会社です。
株式会社ではありますが、法律により国が100%の株を保有することが定められており、民営化されることはありません。その運営についても法律によって定められているため「政府系金融機関」と呼ばれております。
日本政策金融公庫はその目的に「一般の金融機関が行う金融を補完することを旨とし、国民一般、中小企業者及び農林水産業者の資金調達を支援するための金融の機能を担うとともに・・・」と記載されており、事業への融資としては小規模企業への融資など民間金融機関が避けてしまう分野を補完する役目をもっています。
このような背景から日本政策金融公庫はこれから起業する方々に積極的に融資をしてくれる金融機関です。
近年の実績では、平成28年28,392企業 平成29年28,116企業 平成30年27,979企業と高い水準を維持しています。

②信用保証協会
信用保証協会は「信用保証法」という法律に基づく公的な機関です。信用力に乏しい中小企業や起業家が融資を受けられるように「信用保証」をしてくれます。
保証人になってくれる代わりに信用保証料が支払う必要があります。
万が一、金融機関への返済ができなくなった場合には信用協会が債務者である本人に代わって弁済(代位弁済)を行います。ただこれにより信用保証協会はその債務について求償権をもつため、信用保証協会が支払った債務は元々の債務者に請求されます。結果的には返済先が金融機関から信用保証協会に変更しただけという状況になります。
信用保証協会は各都道府県に設立されており、その区域内の企業を対象に業務を行っております。

日本政策金融公庫と信用保証協会は融資条件などが異なる部分があるのですが、大きな違いは日本政策金融公庫が起業家や経営者に直接的に貸し付けを行うのに対して、信用保証協会は債務の保証を行うという形式をとることです。保証協会が融資を行うということはありません。