失敗しづらい起業

 「せっかく起業したものの全くうまくいかず、借金で首が回らず事業を畳まざるをえなくなった」

 こんな不幸話はどなたでも社会人として仕事をしていれば何度か耳にすることがあったのではないでしょうか?

 これから事業をはじめようとする起業家の方々にとって、こういった風の噂できくような不幸話もとても他人事とはおもえないでしょう。もしも許されるなら「どうしてうまくいかなかったのか。」などということも根掘り葉掘り聞きたくなってしまうのではないでしょうか。しかし実際にはそんなことはなかなかかないません。私自身、独立にあたり色々な諸先輩方のお話を聞きました。当たり前なのですが、成功された方から色々なお話聞けるのですが、その逆となるとなかなか難しいのが現実です。

 中小企業白書によると、2005年の中小企業白書をみると、会社を設立してから1年後の存続率は70%程度です。3割程度の方が何らかの理由で1年以内に会社をたたまざるをえない状態におかれます。これを多いとみるか、少ないとみるかは人それぞれだとは思いますが、決して無視ができない数字であることは確かなのではないでしょうか。
また当然ですが、設立からの年数が経てばそれだけ存続していられる法人の数も減っていきます。

 世の中には様々な独立起業者向けの書籍やWEB上の情報があります。それは様々な職業の方からみた経験に基づくアドバイスです。ぜひ自分が起業しようと業種について必要な情報の取集につとめてみてください。

 世の中のサクセスストーリーをみていると、起業家の成功パターンは実に千差万別のように思えます。

 パナソニックの創業者松下幸之助氏のように小学校を中退せざるをえず、丁稚奉公の経験を経て自宅で家族と事業を起こす方や、スティーブ・ジョブスのように悪友ともいえるような友人と自分たちの製品で勝負するために私財を売り払って起業する方もいます。

 彼らは経営の世界のスーパースターたちなのであまり参考にならないのかもしれません。

 プロ野球の野村克也監督の「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という

 有名な言葉がありますが、良い言葉だなと今でも思い返したりしています。

 これを起業におきかえると、時の運や時代背景などで思いもよらず上手くいってしまう場合はあります。とはいえ、事業が借金して倒産してしまう場合にはちゃんと理由がある、ということではないでしょうか。

 起業での失敗を、会社を興したものの数年で債務を返済できずに回らなくなると定義づけると、会計業界で多くの起業家の方々のお手伝いをさせて頂きました私の経験では、失敗しづらい起業家の方はわりにはっきりしています。

 「業務経験」と「少ない固定費からはじめる」

 本当にごく当たり前の話なのですが、非常にシンプルです。

 つまりは起業する業務の経験をしっかりと積んでいて、かつ少ない固定費から企業を始められる状態です。

 「業務経験」

 金融機関が創業融資にあたり、「事業の業務経験」をとても重視するのですが、それにもしっかりとした理由があるわけです。

 当然、豊富な経験があるような事業のほうが成功しやすいのは誰だってわかることでしょう。

 とはいえ、起業する方のすべてが、何年も雇用の立場で修業期間を経て独立するかというとそうでもないです。

 例えば、自宅でひっそり副業としてやっていたECサイトを本格的に事業にしていきたいという方もいらっしゃりますし、普段はサラリーマンとして勤務しながら週末や夜だけ飲食店で板前の修業をさせてもらって起業された方などもいます。

 大切なことは自分の事業を試行錯誤し、ブラッシュアップさせるだけの時間をつくることです。

 「少ない固定費からはじめる」

 いよいよ創業だ、となると、どうしても欲張りになりがちになります。「綺麗な駅近オフィスを借りたい、とか最新の設備が欲しい」などなど
 ある種の気負いもありますし、場合によってはどうしても必要なことがあります。
 しかし、どうしても必要がない場合などには、創業時はできるだけ小さい固定費で済むようにしましょう。まずは自宅で済んでしまうような規模から始めるというのが理想かもしれません。とはいえ、業態によってはそんなことはできないでしょうから、できるだけ小さな固定費で事業を始められるように逆算してみてはいかがでしょうか。
 「業務経験」でも書きましたが、結局のところ自分の事業を試行錯誤してブラッシュアップする時間を作るためのものです。

 起業してすぐはなかなか思ったようにいかないものですし、自分が経営者になってはじめてわかることばかりです。とはいえ、資金にも限界があります。

 まずは小さくはいって様子をみる。起業時にはそのための計画をたてましょう。

まとめ

 ごく当たり前の話をしていまいとても恐縮してしまいますが、起業して存続させられる会社の鉄則ともいえる条件です。

 もちろん、最初から狙いがあり、その狙いがしっかりと当たり、成功していく起業家の方もいらっしゃいます。

 とはいえ、どんなに狙いを定めた計画もうまく成績があがらずに、計画を修正せざるをえなくなることがあります。そこで計画を修正できるだけの資金的な体力があれば問題ないのですが、なかなかそうもいかないのが現実です。

 そう考えると、当初の狙いが順調にいかなかった場合の他のプランニングを実行することができるほどの業務経験と、その修正をすることができるほどの資金的なゆとりを確保することができる少ない固定費から始められる業態というのはリスク分散の観点から極めて重要な課題になります。