法人の損害賠償金の取扱いについて

今回は、法人である会社の損害賠償金の取扱いについてみていきたいと思います。

まずは、法人が損害賠償金を支払った場合の経理処理についてです。会社が何らかの原因で損害賠償金を支払った場合、支払ったすべての損害賠償金を損金として計上できるわけではありません。

そこで、支払った損害賠償金が損金算入できる場合と損金算入できない場合、また損金算入できる場合の損金の計上時期についてみていきたいと思います。

① 支払った損害賠償金を損金算入できる場合

 損害賠償金を損金として計上できるかどうかは、「業務に関するものか」と「会社の役員や従業員の過失によるものかどうか」がポイントとなります。損害賠償金の対象となった行為等が会社の業務の遂行に関連するもので、会社の役員や従業員に過失がない場合は支払った損害賠償金を損金として処理することができます。

② 支払った損害賠償金を損金算入できない場合

 前提として、支払った損害賠償金が法人の業務の遂行に関連するものでない場合は損金算入できません。また、業務の遂行に関係がある場合でも、会社の役員や従業員に過失が認められた場合の損害賠償金も損金算入することはできません。

このような場合の損害賠償金を会社が支払った場合には、その損害賠償の対象である法人の役員もしくは従業員への貸付金となります。

 しかし、役員もしくは従業員から損害賠償金の返済がされない場合、役員もしくは従業員に支払い能力がないと認められるときは損害賠償金分の貸付金を貸倒れ処理することができます。役員もしくは従業員に支払い能力が認められる場合にはその役員もしくは従業員への給与として処理されます。

 次に、こられの損害賠償金の損金計上時期についてみていきたいと思います。原則として、損害賠償金を支払ったときに損金を計上することが認められています。しかし、この「支払った時」以外に計上が認められている場合もあります。例えば、自動車事故等が発生した場合事故の発生から示談等までの成立に時間がかかるときは、示談等の成立前で損害賠償金の支払前であっても、その支出の日の属する事業年度の損金の額に算入することができると認められています。

 もう一つ、信号無視やスピード違反などをしたときの交通違反金についてもみていきたいと思います。役員や従業員の交通違反金を会社が支払った場合、業務上の交通違反金であっても損金計上はできません。会社の業務上で交通違反金を支払った場合は租税公課で計上し、法人税申告書で調整することになります。もし、業務外の交通違反金を会社が支払った場合は、その役員もしくは従業員への貸付もしくは給与として処理します。

 ただし、交通事故等でレッカー代や交通費などが発生した場合には、その事故が業務上のものであれば、損金として計上することができます。その事故が会社の業務外の場合は、事故等のレッカー代や交通費などを損金として計上することはできず、交通違反金と同様に当事者への貸与もしくは給与として処理することになります。

 それでは逆に、会社が損害賠償金を受取った場合の処理についても考えてみたいと思います。会社が何らかの損害を受け、損害賠償金を受取った場合は損害賠償金の確定した日もしくは支払いを受けた時に雑収入として処理します。

 このように、損害賠償金はその賠償金が業務上のものなのかによって損金として計上できるかが変わってきます。損害賠償金の支払いなどはあまり頻繁にはないものだと思いますが、支払いがあったときにはその賠償金の内容をよく検討したうえで損金計上するようにしましょう。また、損金計上する場合には賠償の内容等を記録として残しておくと税務調査等があった場合に対応しやすいでしょう。