税金

交際費と寄付金の判断基準について

こんにちは、突然ではありますが、近年の話題で自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件がありましたね。企業がこのパーティ券を購入したとしたら、交際費でしょうか?寄付金でしょうか?​

答えは「どちらにもなる可能性がある」です。​

こちら面白い論点になりますので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

寄付金と交際費

交際費と寄付金の違いとはなんでしょうか。​

一言で言えば「反対給付(対価性)があるかどうか」ということになります。​

ここから詳しくみていきたいと思います。

意義の違いからみる寄付金と交際費

交際費と寄付金の意義を比べてみましょう。​

〇交際費​

「交際費とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のあるもの等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。」​

ただし、次の費用は交際費等から除かれる。​

(1)専ら従業員の慰安のために行われる運動会等のために通常要する費用(∴福利厚生費)​

(2)飲食費であって、参加者一人当たりの支出額が10,000円以下の費用(一定の書類を保存している場合に限る)(∴損金(法人税法上の費用))​

(3)カレンダー等の贈答費用、会議費、取材費として通常要する費用(∴広告宣伝費・会議費・取材費)

〇寄付金​

「寄付金の額は、寄付金、拠出金、見舞金その他いずれかの名義をもってするかを問わず、次の価額をいう。ただし、広告宣伝費、見本品費その他これらに類する費用、交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く」​

(1)内国法人が金銭その他の資産の贈与をした場合​

→その金銭の額、金銭以外の資産のその贈与時の価額​

(2)内国法人が経済的な利益の無償の供与をした場合​

→その経済的な利益のその供与時の価額​

今ご覧いただいた通り、相手のための支出したという点で交際費と寄付金はかなり似ていますね。​

結論何か違うのかと言えば​

支出した相手先が事業関係者等かどうか

その支出に反対給付(対価性)があるかどうか

の2点があるということがここから読み取れます。

事例からみる交際費と寄付金

上記①については相手先との関連性ですので、説明は省略させていただきます。​

ここからは②について事例を使ってみてきましょう。​

◎特定の政治団体の中傷行為等を排除するためにやむなく支出した金員は交際費ではなく寄付金に該当するとした事例​

請求人は、特定の政治団体の中傷行為等を排除するためにやむなく支出した金員は、その支出の経緯や当該政治団体が請求人の事業関係者等に当たらないことから、寄付金や交際費等に該当しないと主張するが、一般に寄付金とは、金銭その他資産の贈与又は経済的な利益の供与のうち、事業の遂行に直接関係のあるもの以外のもの、すなわち、事業の遂行に直接関係ないもの及び事業の遂行との関係が明らかでないものと解され、特定の政治団体に対する本件支出金は、請求人の事業遂行に直接関係ないものであるので寄付金に該当すると認めるのが相当である。​

つまり、今回の事例はそもそも事業に直接必要な支出だったのかという部分で争われています。結果的に事業に必要ないのない(対価性がない)支出ということでこの支出は寄付金になりました。

引用元 (寄付金の範囲 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所)​

次は交際費ではなく外注費ですが、対価性を問われたケースの一つとなります。​

◎外注費として支出した工事代金等につき対価性がなく寄附金に該当するとした原処分の一部を取り消した事例​

《ポイント》​

 一般に、会計帳簿は業務上の金員の動きがそのまま記載されるものであるから、特段の事情のない限り、会計帳簿に記載されたとおりの事実を認めることができるところ、原処分庁が会計帳簿に記載された事実(費用)について対価性がないと認定する場合には、原処分庁がその立証責任を負うことになる。​

 この事例では、請求人が会計帳簿に記載された事実と異なる事実を主張したことから、請求人において、かかる事実の存在や異なる事実を会計帳簿に記載することとなった事情などの特段の事情を立証する必要があるとしたものである。​

《裁決の要旨》​

 請求人は、各事業年度に追加の外注費として支出し損金の額に算入した金員(本件支出金)は、①過去に施工された工事に係る追加の支払を現場名を付け替えて支出したもの、及び②実際の工事対価の支払として支出したものであり、対価性があることから、法人税法第37条《寄附金の損金不算入》第7項に規定する寄附金には当たらない旨主張し、一方、原処分庁は、本件支出金にはいずれも対価性がなく寄附金に当たる旨主張する。​

 上記①に係る本件支出金については、請求人の会計帳簿等に記載された現場と関係がない上、請求人が主張する追加支払に合理的理由や支払うべき特段の事情があったとはいえず、対価性のない支出であると認められることから寄附金に該当する。一方、②に係る本件支出金については、実際に工事が行われており、当該工事に係る対価であると認められることから寄附金に該当しない。​

《参照条文等》​

 法人税法第37条第7項​

こちらは、過去に施工された工事に係る追加の支払と主張したものが合理的理由や支払うべき特段の理由がないために対価性がないとみなされ寄付金となったものになります。​

引用元(寄付金の範囲 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp))

冒頭の条件をもう一度記載すると

支出した相手先が事業関係者等かどうか

その支出に反対給付(対価性)があるかどうか

上記の要件を満たす(説明できる)資料があるかどうかが重要であると言えます。

ここで冒頭のパーティ券の事例に当てはめてみると

パーティーに事業関係者が多く出席する

上記の理由から実際に出席したものである

上記①②が共に認められる場合には出席分のパーティ券代は交際費となり、そうでない場合には寄付金となります。

参考(東京地方税理士会|暮らしと税 (tochizei.or.jp))

まとめ

以上が簡単ではありますが、交際費と寄付金についてになります。

いかがだったでしょうか。

他にもご紹介出来ていない部分や、その他の経費と寄付金の話もございます。

今回の話は実際にも重要な部分で、判断が難しいものになります。

何かございましたらお気軽にご相談下さい。

電子帳簿保存法とは​

概要

電子帳票保存法とは、一言で言うと紙の領収書や請求書などを電子データで保存しなければならないこととできる旨を定めたものになります。

対象者

電子取引を行っているすべての事業者(ほぼ全ての事業者)が該当します。

対象期間

2024年(令和6年)1月~以後にやり取りする電子取引データが対象になります。

対象書類

(1)データでやりとりをした書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)​

(2)会計ソフト等パソコンを使用して作成した帳簿書類(仕訳帳、総勘定元帳、貸借対照表など)​

(3)紙でやりとりした書類(契約書、見積書、注文書、領収書など)

内容

電子帳票保存法にはMust(しなければならない)もの1つとCan(できる)もの2つが混在しています。​

こちらを理解するために分けてみていきましょう。​

(1)電子取引関係の保存​

 こちらはMust(しなければならない)になります。​

 対象書類は上記の(1)に載っているもので今までは紙で印刷して保存することが可能で   したが、2024年1月からはそれが出来なくなります。​

(2)電子帳簿・電子書類関係の保存​

 こちらはCan(できる)になります。​

 対象書類は上記の(2)に載っているもので、一定の要件を満たして、かつその旨を事前に税務署に届出た方には、その電子帳簿に関して過少申告があった場合には過少申告加算税を5%軽減する措置があります。​

(3)スキャナ保存関係​

 こちらもCan(できる)になります。​

 対象書類は上記の(3)に載っているもので、簡単にいえば紙を置くスペースが減ってオフィスなどを効率的に使えるようになる。といったメリットがあります。

保存方法

各保存について要件があります​

(1)電子取引関係の保存​

 ①改ざん防止​

  (例)タイムスタンプを付与、訂正・削除の履歴が残るシステム等の利用​

 ②日付・金額・取引先で検索可能​

 ③ディスプレイとプリンターの設置​

(2)電子帳簿・電子書類関係の保存​

 ①システムの説明書やディスプレイ等を備え付けていること​

 ②税務署職員からのデータの「ダウンロードの求め」に応じることができること​

 ※さらに一定の要件を満たして、届出をしていた場合には過少申告加算税の軽減措置あり​

(3)スキャナ保存関係​

 入力期間の制限やカラー画像・解像度・タイムスタンプの付与など細かい規程があり​

 こちらに関しては税務署HP(スキャナ保存関係|国税庁 (nta.go.jp))にてご確認下さい

まとめ

今回対応を求められているのは(1)電子取引関係の保存になります。​

今年の内に御社の書類でデータでやり取りしているものを把握し、改ざん防止についてどういった方法で処理をするのか検討しておくことが大事ですね。​

急にタイムスタンプなどは難しいという方は国税庁に代わりに規程(参考資料(各種規程等のサンプル)|国税庁 (nta.go.jp))をつくる方法もございます。​

お忙しい中対応するのは難しいこともあるかと存じます、何かありましたらお気軽にご相談下さい。

インボイス制度と消費税課税事業者​

インボイス制度(適格請求書等保存方式)により免税事業者から課税事業者になった方も多く見受けられるようになりました。​

消費者としてではなく、事業者として消費税と付き合うに辺り色々と分からないこともありますよね。​

そこで今回は消費税とはどういうものか、簡単におさらいしてみましょう。​

消費税とは…

いきなりですが、消費税は何%でしょうか?​

ご存じの通り、10%になります(2024年11月現在)​

遡ること約5年前、2019年10月1日より10%になりました。​

この10%は標準税率といい、似たものに軽減税率というものがあります。​

どちらかと言えば軽減税率という単語のほうが馴染みがあるかもしれませんね。​

軽減税率が8%というのはご存じだと思いますが、大きく分けて2つが対象に​なっています。何と何でしょうか。​

正解は…​

①飲食料品(酒類を除く)②新聞(週2回以上発行されるもので、定期購読契約に基づくものに限ります)でした。​

①は簡単ですが、②まで出てきた方はかなり消費税について意識が高い方だと思います。​

余談ですが、①の酒類を除くという話で酒類の基準がアルコール分が一度以上かどうかという点で決まるため、調味料のみりんが10%になるということが当時話題になったのを覚えています。​

消費税の区分

ここからは消費税のかかる取引とかからない取引とはどういったものがあるのか​

ということについて考えていきたいと思います。​

全体が分からないと見えてこないと思うので今から話す内容を図にしてみました。​

とりあえず、課税取引・不課税取引・非課税取引・免税取引の4つに分かれるのだということが分かればOKです。

課税取引と不課税取引を分ける4つの条件

「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」​

No.6105 課税の対象 より引用​

これを分解すると…​

国内において

②事業者が事業として

③対価を得て行う

④資産の譲渡等

となります。​

上記①~④全てを満たしていると課税取引となる訳ですが、①~③に当てはまらないものはイメージが湧くけど④ではないもののとは…となる方もいると思いますので例を挙げてみます。​

(1) 保険金や共済金…資産の譲渡等の対価といえないからです。​

(2)資産の廃棄・盗難・滅失があった場合…資産の譲渡等に当たらないからです。​

No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例 より引用​

要するに、殆どの国内取引は事業者が事業として対価を得て行う課税取引であるということです。

非課税取引とは

「消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う取引を課税の対象としています。​

しかし、これらの取引であっても消費に負担を求める税としての性格から課税の対象としてなじまないものや社会政策的配慮から、課税しない非課税取引が定められています。」​

No.6201 非課税となる取引 より引用​

目にする機会が比較的ありそうなものを挙げると​

(1)土地の譲渡及び貸付(貸付には条件あり)​

(2)有価証券の譲渡​

(3)支払手段の譲渡​

(4)預貯金の利子および保険料を対価とする役務の提供等​

(5)日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡、

および地方公共団体などが行う証紙の譲渡​

(6)商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡​

(7)国等が行う一定の事務に係る役務の提供​

(8)外国為替業務に係る役務の提供​

などがあります。​

その他はリンク先にございますので、気になる方はそちらからご覧ください。

免税取引とは

簡単に言うと、国内と国外をまたぐ取引になります。​

(1)輸出取引​

(2)輸出類似取引(国際輸送、外国にある事業者に対するサービスの提供)※電気通信役務の提供を除く​

事業者としては上記が主に出てきて注意しなければならない取引です。​

課税区分が異なると大きく消費税額に影響が出るので取り扱いには細心の注意が必要になります。

消費税の納付税額の計算

ここまでくれば後少しです。​

最後に全ての取引の消費税区分を行った上で、課税取引となる売上に係る消費税額から課税取引となる仕入に係る消費税額(仕入税額控除)を引いたものが消費税の納付税額になります。​

 

 

まとめ

今回は消費税について考えていきました。​

消費税は非常に細かく複雑なものになり、資金繰りに大きな影響を与えます。​

特に輸出入取引がメインとなる貿易は消費税の処理が複雑になりやすく、商品・お金・契約書等の流れの把握が必要になるため正しく会計に反映させるためには相応の理解と練度が必要となります。​

経営していくにあたり、何か不安なことがございましたらお気軽にご相談ください。​

以上ご覧いただきありがとうございました。

出張旅費規程と出張手当について

今回は、仕事で遠方や宿泊を伴う出張をした場合に支給する費用の会計処理について見ていきたいと思います。

出張をした場合、実際にかかった交通費や宿泊費などは、もちろん経費として計上することができます。

(ただし、経費として計上するためには、交通費や宿泊費を支払った領収書が必要となりますので、領収書はしっかりと保管をしておきましょう)

しかし、出張先で外食をしたりお弁当を買ったりと食事をすることは当然ありますよね。また、出張のためにちょっとした日用品を購入することもあると思います。

そこで、出張先での個人の飲食や日用品の購入の手当として、実際の交通費や宿泊費とは別に「出張手当」を支給している会社も多いのではないでしょうか?

この出張旅費の手当は、支給前に規定が必要であり、個人事業主と法人では会計処理が異なる場合などがあります。

そこで、今回は出張手当を支給するための前提条件や出張手当を支給したときの会計処理などを詳しく見ていこうと思います。

出張手当を支給するには

まず、出張手当を支給するには「出張旅費規程」の作成が必要となります。

出張旅費規程では、出張手当として一定金額の支給を決めておく以外にも、宿泊代や交通費の支給について出張の日数や移動距離に応じて支給する金額を事前に決めておくこともできます。あらかじめ、宿泊代や交通費を一律で決めておくことで、細かい実費精算の手間を省くことができます。

(ただし、出張手当の中に、一律で定められた宿泊代がある場合は、その出張で支払った宿泊費の実費精算はできません)

この出張旅費規程は税務署への届出などの必要はありません。

ただし、法人の場合は作成した出張旅費規程の承認を株主総会で受ける必要があります。また、支給する金額については、役職によって変えることはできますが、原則として会社で働いている従業員全員を支給対象とする必要があります。

社長や役員のみに支給し、従業員へは支給しないということは原則として認められません。

個人事業主が事業主本人へ出張手当を支給した場合

個人事業主が出張旅費規程を作成して、事業主本人へ出張手当を支給した場合には経費として計上できません。

個人事業主が経費として計上できるのは、実際に支払った交通費や宿泊費、取引先との飲食代などの実費分だけになります。

法人が社長へ出張手当を支給した場合

法人である会社が社長へ出張手当を支給した場合は、支給した出張手当を経費として計上できます。もちろん、出張旅費規程を作成し、規定で定められた金額に限りますが、支給した全額を旅費交通費などの経費として計上できます。

ただし、社長を含む役員の出張手当が不自然に高額であったり、役員と従業員で支給される出張手当にあまりにも差があったりという場合などは、税務調査で指摘される可能性があるので注意が必要です。

個人事業主が事業主本人へ出張手当を支給しても経費として認められませんでしたが、法人として社長へ出張手当を支給する場合には経費と認められます。

この点については、法人を設立するメリットの一つと言えるでしょう。

個人事業主・法人が従業員へ出張手当を支給した場合

個人事業主の場合でも、法人の場合でも従業員へ出張旅費規程で定めた出張手当を支給した場合には経費として計上できます。

出張手当を支給された側の課税関係

基本的に、給与として家族手当や家賃補助、交通費(非課税交通費を除く)が支給された場合には、支給された金額に対して、所得税や住民税、社会保険料などがかかってきます。

しかし、この出張手当については、支給された側の所得税・住民税はかからず、社会保険料の対象にもなりません。

そのため、従業員としては、給与として支給されるよりも出張手当として支給される方が手元に残る金額が大きくなります。

出張手当を経費として認めてもらうためには

出張手当は、出張をした場合にその出張をした本人に出張旅費規程で定めた金額を支給するため、証拠となる書類や領収書などがありません。

過去には、実際には出張へ行っていないのに出張手当として手当を支給したという事例もあり、出張手当は税務調査で比較的チェックされやすいポイントとなります。

そこで、出張手当を支給した場合には、支給した本人に「出張報告書」や「旅費精算書」を作成してもらい実際に出張に行ったという証拠を残しておきましょう。

また、出張旅費規程で出張手当の中に宿泊代や交通費も規定している場合は、出張手当として宿泊代や交通費を支給したら、その出張での実際の宿泊代は経費として計上することはできません。

しかし、宿泊代や飲食代の領収書は出張へ行ったという明確な証拠となるため、出張中にかかった宿泊代や飲食代については、その実際の支出額を精算しない場合でも、出張報告書や旅費精算書と一緒に保管するようにしておきましょう。

出張手当を経費として確実に計上するためにも、出張旅費規程で出張報告書や旅費精算書の作成を規定しておいた方が良いでしょう。

まとめ

今回は出張旅費に関して、出張手当の支給の仕方や支給したときの会計処理についてみていきました。個人事業主が事業主本人へ出張手当を支給した場合と法人が社長へ出張手当を支給した場合では経費としての扱いが変わってくるので注意が必要です。

出張旅費をあらかじめ決めておくことで、宿泊費や交通費などを出張の都度、実費精算をする手間が省け、一般的に実際の宿泊代や交通費より手当として支給した金額の方が大きくなる場合も多くその場合には、会社側にとっても節税になります。

また、出張手当を支給された側(社長や従業員)は所得税や住民税が非課税となり、社会保険も対象外のため、従業員も会社もどちらにも節税効果がある支出となります。

出張旅費規程をしっかりと作成し、出張手当を支給することで会社も従業員もメリットを受けることができます。

まだ、出張手当を支給したことがないという場合は、ぜひ出張旅費規程の作成と出張手当の支給についても検討してみてはいかがでしょうか?

(今回の記事は、2022年8月時点の法令を基に作成しております。)

消費税の納付義務がある人とは?

法人の会社を経営している方や個人事業主として活動している方は、毎年それぞれの申告時期に確定申告をしているかと思います。

法人税や所得税は、基本的に利益がプラスでもマイナスであっても、法人の場合は法人税、個人の方は所得税の申告を毎年しなければいけません。しかし、消費税はすべての法人・個人事業主が申告(納付)するものではありません。

また、2023年10月からインボイス制度も始まり、ますます消費税の制度が複雑になりましたが、今回はどのような場合に消費税の申告をしなければいけないのかを見ていきたいと思います。

消費税の納税の有無についての判定は、法人の場合も個人の場合も同じになります。

なお、今回の記事は、2024年10月時点の情報を基に作成しております。

消費税の免税事業者・課税事業者とは?

①  消費税の免税事業者とは 

 消費税の免税事業者とは、消費税の納税義務のない法人・個人事業主のことをいいます。

 原則として、法人の開業から2年間は、消費税の免税事業者である場合が多いです。

 消費税の免税事業者の場合は、消費税の申告の必要はありません。

②  消費税の課税事業者とは

 消費税の課税事業者とは、消費税の申告・納付の義務を負う法人・個人事業主のことをいいます。

 法人の消費税の申告・納付の期限は、法人税の申告期限と同じです。

 個人事業主の消費税の申告・納付の期限は、翌年の3月31日までとなります。

 ※個人の方は所得税の申告期限と異なりますが、所得税の申告・納付と同時に消費税の申告・納付をする場合が多いです

消費税の課税事業者となる場合

消費税の課税事業者になる場合には一番多く知られているのは、以下の①で知られているパターンで、殆どの方は

売上が1000万円をこえると消費税を払わないといけないなどとご記憶されていることでしょう。
以下で消費税の課税事業者となる一般的なパターンを説明いたします。

①  基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合

消費税の納税の有無を判定するのに「基準期間」の課税売上高が重要となってきます。

基準期間とは、前々期(法人の場合は前々事業年度、個人の場合は前々年)の売上のことをいいます。

つまり、個人事業主の方は、2022年の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、2024年から消費税の課税事業者となり、所得税の確定申告の他に消費税の確定申告をする必要が出てきます。

法人の場合は、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超える場合に、法人税の確定申告と消費税の確定申告を行う必要があります。

②  特定期間の課税売上高と給与等が1,000万円を超える場合

上記①の基準期間の課税売上高が1,000万円以下であった場合でも、課税事業者に該当する場合があります。それは、「特定期間」の課税売上高が1,000万円を超える場合です。

(課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等の金額により判定することもできます。)

特定期間とは、前年度の上半期の期間(法人の場合は原則、前事業年度開始の日以後の6か月間、個人の場合は前年の1月1日~6月30日まで)のことをいいます。

この特定期間の課税売上高と給与等の金額がそれぞれ1,000万円を超える場合は消費税の課税事業者となります。

この場合は、課税売上高と給与等の金額の両方が1,000万円を超えた場合であり、課税売上高か給与等のどちらかが1,000万円以下の場合は課税事業者には該当しません。

③  「消費税の課税事業者選択届出書」を提出している場合

上記①、②に該当していない場合であっても、消費税の課税事業者になることはできます。それは、「消費税の課税事業者の選択届出書」を税務署に提出している場合です。

原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(適用を受けようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)に「消費税の課税事業者の選択届出書」を提出することによって、特定期間や基準期間の課税売上高などに関係なく消費税の課税事業者になることができます。

④その他の場合
①~➂では一般的な課税事業者となるパターンについてご説明差し上げました。ただこの他にも特例により消費税の課税事業者にならざるをえない状況もいくつかございます。

さらに、2023年10月からインボイス制度が始まったため、今まで免税事業者で消費税の納税義務がなかった方でも、消費税の課税事業者になることを選択する方が増えてくるでしょう。

消費税の納税義務の判定は、非常に複雑なものになります。特に課税売上高が1,000万円前後の場合などは、判定に迷う場合も多いのではないでしょうか?

また、インボイス制度の導入により、消費税の課税事業者になった方が良い場合と免税事業者で良い場合がそれぞれの事業の業態によって変わってきます。

消費税の納税義務や判定方法を詳しく知りたいという場合は、税務署や会計事務所に相談してみることをお勧めします。

棚卸資産の評価について

 今回は、保有している棚卸資産の評価について確認していきたいと思います。

棚卸資産とは、完成している商品や製造途中の製品や製品の原材料、事務用消耗品である貯蔵品などのことをいいます。

前回の記事では、棚卸資産の評価方法としては7種類あり、その7種類のうちから、各企業が自分の会社に合った方法で棚卸資産の評価をするということを確認しました。

 棚卸資産は、基本的に取得価格を基準として各企業が選択した評価方法によって評価額を算定します。この時に、取得価格と評価時点での棚卸資産の価格があまりにも異なっていた場合、適正な資産額を把握することができません。

例えば、10年前に原材料としてパソコンを購入したとします。そのパソコンを現在でも原材料として保有している場合、現在では10年前のパソコンに10万円の価値はなくなってしまっている場合が多いですよね。

 このように、購入したときの価格と評価する時点での価格に大きな差が生じている場合に購入時の取得価格のままで棚卸資産として計上してしまうと、企業の正確な資産の把握ができなくなってしまいます。

そこで、棚卸資産の取得価格が評価時点での価格より小さい場合と棚卸資産の取得価格が評価時点での価格より大きい場合に分けて考えていきます。

 まず、棚卸資産の取得価格が評価時点での価格より小さい場合についてです。

10万円で購入した材料が、評価時点で15万円になっていたというような場合ですが、このようなときは基本的には評価益は計上しません。会計上、棚卸資産に評価益がある場合は、その商品を販売したときに利益が確定するため、評価時点での益は計上しないということになっています。

 次に、棚卸資産の取得価格が評価時点での価格より大きい場合についてです。

10万円で購入した材料が、評価時点で2万円になってしまったというような場合ですね。

保有している棚卸資産の時価が評価額よりも大きく下回っていた場合、実際の価格は低いにもかかわらず、貸借対照表上では取得価格をもとに算定された評価額が計上されてしまいます。これでは、企業の正確な財政状態を把握できなくなってしまいます。そのよう場合には、税務上、棚卸資産の評価損を計上することが認められています。

しかし、取得価格と評価時点での価格に評価損がでればすべて損金として計上できるというわけではなく、評価損の扱いについては法人税法で定められています。

税法上、棚卸資産の評価損の計上が認められているのは主に次の3つです。

災害により著しく損傷したこと

→台風や地震などの自然災害により商品に損害がでてしまったときなどに認められます。

著しく陳腐化したこと

→いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであることや商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったことなどが考えられます。〔法人税法基本通達9-1-4

その他準ずる事実が発生した場合

→例えば、破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったことなどが挙げられます。〔法人税法基本通達9-1-5

法人税法第33条第2項

このように①~③の事実に該当するときは、税務上、棚卸資産の評価損を損金として計上できます。

 しかし、棚卸資産の時価が単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の事情によって低下したなどの理由では損金に計上できないので注意が必要です。

商品の型式が古くなった場合や新性能の商品が発売されたことにより旧性能の商品の販売価格が下がってしまったなど場合は評価損の計上が認められます。

一方で、過剰に生産したため販売価格が下がったり、他社との値下げ競争のため商品の価格が下がったりしたような場合には評価損の計上は認められません。

 つまり、棚卸資産の評価損を計上するためには、価格がいくら下がったのかよりもなぜ価格を下げたのかという理由が重要となってきます。評価損を計上した場合には、その値下げの合理的な理由を証明できるように書類等を保存しておいた方が良いでしょう。

 以上のように、棚卸資産の評価益については原則計上しない、評価損については税法上認められている部分については評価損を計上できるということがわかりました。

長期間保有している材料や売れ残っている製品などは取得価格と評価時点での価格に差がある場合も多いかと思われます。そんな時は、税法上で認められる範囲で評価損を計上し、適切な棚卸資産の価格を把握するようにしましょう。

合同会社と株式会社の違い

個人事業主として営んでいる事業を法人化して色々な税制優遇を受けたいという場合や法人を設立したいけれど費用面が心配だという場合に、【合同会社】を設立するという方法があります。

正確には、法人には「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」の4種類がありどの種類で設立するか選ぶことができます。

今回はその中でも、設立されることが多い「合同会社」と「株式会社」を比較してみようと思います。

合同会社とは、アメリカではLLCと言われている会社の形態で、日本では2006年から制定されました。代表的な企業名としては、Appleやアマゾン、グーグルなどの世界的な大企業が日本では合同会社の形態で日本法人を設立しています。

今回は、最近、設立が増えてきている合同会社と一般的な形態である株式会社の共通点や相違点、それぞれのメリットやデメリットを見ていこうと思います。

合同会社と株式会社の共通点

①決算・申告・納付について

合同会社も株式会社も年に1回企業の利益を計算し、確定申告書を作成、利益に応じて法人税・地方税・消費税等を納付する義務が生じます。

決算書や申告書の書式や作成方法、提出や納付の期限については合同会社も株式会社も違いはありません。

また、決算月を定款で自由に定めることができるというのも共通です。

(ただし、定款で定めた決算月は原則として変更はできません)

②法人の税制優遇について

基本的に合同会社であっても株式会社であっても法人であることには変わりないため、受けられる税制優遇に違いはありません。法人化の大きなメリットである役員報酬の費用計上や赤字を繰り越せるなどの優遇制度は合同会社でも株式会社でも適用をうけることができます。

③社会保障への加入義務

法人の場合は役員が一人の会社であっても社会保険の加入が義務付けられていますが、こちらも合同会社であっても株式会社であっても違いはありません。

役員一人のみで合同会社を設立した場合でも、社会保険へは加入しなければなりません。

合同会社と株式会社の相違点

①会社の商号と代表社員の名称

合同会社と株式会社の大きな違いの一つが会社の商号と代表者の名称です。

合同会社の場合は「〇〇合同会社」、株式会社の場合は「☆☆株式会社」という商号になり合同会社が株式会社の商号を付けることはできません。

また、社長の名称も合同会社は「代表・社長」等、株式会社は「代表取締役」という名称を主に使用します。合同会社は社長の名称について比較的自由に決めることができます。

②合同会社の方が設立費用を抑えられる

設立に係る費用は、法人を設立する際の大きなポイントとなると思います。

合同会社も株式会社もどちらも法人の設立なのですが、設立に必要な費用が違ってきます。

合同会社の設立には、登録免許税6万円のみが必要となります。

一方、株式会社は公証人手数料(定款の認証費用)5万円と登録免許税15万円で合計20万円ほどかかります。

合同会社も株式会社も定款を作成して会社の基本的なルールを定める(業務内容や会計期間、会社の所在地等)必要がありますが、株式会社はこの定款を公証役場に提出し認証をうけなければなりません。この公証役場での認証には、3~5万円ほどかかります(資本金等の額によって変わってきます)。

合同会社の場合は、定款を作成する必要はありますが、公証役場での認証を受ける必要がないため、公証人手数料がかかりません。

このように、合同会社と株式会社では設立に必要な費用が違ってきます。法人を設立したいけれど、費用はあまりかけたくないという場合は合同会社の設立を検討することをおすすめします。

(会社の設立登記を社労士へ依頼する場合や設立のときに税理士に届出の作成を依頼する場合などは、登録免許税や公証人手数料以外にも士業ヘの報酬がかかってきます)

③利益配分や会社の意思決定について

会社に利益が出たときに、その利益の一部を内部留保として会社に残し、残りの利益は出資者へ還元するという場合に合同会社と株式会社では分配の割合が違ってきます。

まず、株式会社は会社の株の持分に応じて利益を還元します。株式会社の場合は、分配の割合が持ち株に応じてということになるので、利益の分配を自由に決めるということはできません。

一方で合同会社の場合は、出資の割合に応じた利益配分をする必要はなく、社長もしくは会社の代表者が利益の分配割合を自由に決めることができます。出資金を出している人が複数いる場合でも、還元しようとするすべての利益を代表者一人へ分配することも可能です。

また、株式会社は会社の重要事項(役員報酬の変更や会計期間の変更等)を決めるときに一定数の株主の賛成が必要となります。しかし、合同会社の場合は会社の重要事項を決めるときでも一定の株主の賛成を必要とすることがなく、会社の意思決定が行いやすくなります。

合同会社の特徴

 ここまで、合資会社と株式会社の共通点と相違点を見てきましたが、合同会社のメリットをまとめると、設立費用を安く抑えつつも法人の税制優遇を受けることができる、利益配分や会社の意思決定を代表者1人で行いやすいという点が挙げられます。

 一方、合同会社の株は上場することができないため、将来、会社の株式を上場したい場合は株式会社を設立した方が良いでしょう。

株式会社の特徴

株式会社の特徴は、社会的な信用が高く大規模な事業や融資が受けやすく、また資金調達として株式の上場が可能という点です。

一方で、株式会社は合同会社と比べると設立費用がかかり、作成する書類や事務手続きも煩雑になるという点も考えられます。

今回は合同会社と株式会社の共通点や相違点、それぞれのメリット・デメリットを見てきました。合同会社と株式会社はそれぞれにメリット・デメリットがあり、どちらで設立した方が良いかは、会社の規模や事業内容等で変わってきます。

合同会社について興味がある、自分の事業は税務会計上では合同会社か株式会社どちらが良いかアドバイスを聞いてみたいという場合には、会計事務所や税理士事務所に相談をすることをおすすめします。

(今回の記事は2022年4月時点の情報をもとに作成をしております。)

法人成りのメリット・デメリット

これから事業を始めようと思っている方、あるいは事業を営んでいる方で個人事業主として営んでいくか、法人化すべきか悩んでいる方は多いのではないでしょうか?

個人事業主としてか法人として事業をしていくかどちらが有利なのかとても気になりますよね。

もちろん、個人事業主と法人でどちらが有利なのかは事業の規模や売上、事業を営んでいる本人の状況によって変わってきますが、今回は、法人成りのメリット・デメリットについてみていきたいと思います。

法人成りのメリット

①役員報酬を経費として費用計上できる

社長もしくは個人事業主が会社から給与を受け取っている場合の会計処理が法人と個人事業主では異なります。

個人事業主であっても、毎月事業のお金から給与(生活費)として引出している場合も多いかと思いますが、その生活費として引出した現金は経費として計上することができません。

一方、法人から社長が役員報酬として毎月一定額を支給されていた場合、役員報酬として支払った金額を費用として計上することができます。

個人事業主も法人も「収入-費用=所得」という考え方は同じなので、所得が少ないほど納める税額も少なくなります。そして、法人は役員報酬を費用の金額に加えることができます。

ただし、役員報酬というのは、規制が多く、毎期の会計期間開始の日から3ヶ月以内でないと役員報酬の金額を変更することはできません。毎期の会計期間開始の日から3カ月以内に決めた報酬の額を少なくとも1年間は継続して支給することになります。毎月の利益に応じて役員報酬を変更することはできません。そして、役員に毎月の金額にプラスして賞与を支給したい場合は会計期間開始の日から3カ月以内に届出を提出する必要があります。【役員報酬は変えられない!!

また、毎期の会計期間開始の日から3カ月以内に決めた役員報酬よりも多くの金額を支給しても、決めた金額を超える部分については費用として計上することはできません。

このように色々な規制はありますが、役員報酬は金額が大きくなることも多く、法人成りすることによって役員報酬を費用として計上することができれば、大きな節税効果が期待できます。

②役員報酬と個人事業主の事業所得の所得控除額の違い

先ほど役員報酬と個人事業主への給与では、費用計上できるかどうかに違いがあると言いましたが、役員報酬として会社から報酬をもらう場合と個人事業主が事業の利益を得る場合では、所得控除される金額も違ってきます。

(所得控除とは、所得税の計算をするときに、所得から一定の金額を差引くことをいい、所得控除が多くなるほど、所得金額が減額されるため節税効果が高いといえます。)

法人が役員報酬を支給すると役員(社長)は最大で195万円の所得控除を受けることができます。

(給与所得控除は、支給される給与等の額によって異なりますので、ご注意ください)

一方で、個人事業主の所得(事業の利益)の場合は、青色申告特別控除の65万円までの所得控除しか認められていません。

事業が成長しており、利益も充分に出ている企業の場合には、法人として会社を設立して、役員報酬として社長へ給与を支給し、役員報酬として支給した費用を経費として計上しつつ、役員報酬として給与を得た社長自身は、給与所得控除を有効に活用し所得の金額を抑えるという節税も効果が高いと考えられます。

③事業の赤字を繰り越しすることができる

事業の利益が赤字だった場合の赤字の繰越について個人事業主と法人とで考え方が大きく違ってきます。

法人は利益が赤字になった場合、その赤字を10年間繰り越すことができます。

1年目で100万円の赤字が出た場合、1年目の法人税がかからないということに加えて、2年目に赤字を繰り越すことができます。そのため、2年目に100万円の利益があった場合でも、1年目の赤字と相殺して利益が0円ということになります。また、赤字を繰り越せる期間は10年間で、利益が出た場合は過去の赤字の金額から相殺されます。

一方、個人事業主の場合は、事業所得と給与所得等や不動産所得等の所得を合算して所得金額を計算し、所得税の金額を算出しますが、個人事業主の合計所得金額が赤字もしくは、事業所得は赤字が出ているなどの場合でも、赤字(損失)を翌年に繰り越すことはできません。

①の役員報酬の費用計上と合わせてこちらも、法人成りによって大きな節税効果が期待できます。

④社会的な信用度が上がる

①・②は税金の面で大きなメリットを見ていきました。法人成りすることで会計的なメリットも多いですが、社会的な信用度が上がるという面もあります。

法人成りすることによって、法人名義のクレジットカードや銀行口座を作ることができるようになります。また、融資が受けやすくなったり、仕事を受注するときも法人の方がしっかりとした印象になったりします。

このように、法人成りすることで社会的な信用が上がり、より事業を拡大していきたいという場合には有利だと考えられます。

法人成りのデメリット

①法人の設立には費用が掛かる

個人事業主として事業を開始する場合には、基本的に税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出するだけです。

しかし、法人を設立する場合には、登記をしたり定款を作成して認証を受けたりと様々な作業が発生し、それにともなって費用もかかってきます。登記費用だけで、おおよそで20~30万円ほどで、さらに税理士や司法書士などへ依頼した場合はそれらの士業への報酬も追加でかかります。

事業を始めたばかりで資金的にあまり余裕がないという場合には、この設立費用も負担が大きくなるでしょう。

②法人住民税の均等割がかかるようになる

法人の場合は、住民税均等割として毎年、7万円前後(県・市区町村によって金額は異なります)を納付する必要があります。

この法人住民税の均等割は、事業の利益が赤字であっても納付しなければなりません。

③社会保険料の納付義務がある

個人事業主の場合は、従業員が5名以下の場合は会社として社会保険料を納付する義務はなく、その場合は従業員がそれぞれに個人年金や国民健康保険を支払います。

一方、法人は社員が役員の社長1人だけであった場合でも会社が社会保険料を納付する義務を負います。納付する社会保険料は、従業員と会社で半分ずつ負担することになっています。

また、一般的に個人で納付する国民健康保険と個人年金の金額よりも会社で納付する従業員一人当たりの社会保険の方が納付金額が高くなります。

このように、法人成りすることによって、役員や従業員の社会保険料の半分を会社で負担する必要があるため、こちらも法人成りのデメリットと言えるでしょう。

(会社が負担した分の社会保険料は、経費として費用計上することができます。)

④様々な手続や申請があり事務作業が煩雑になる

これは、③とも関係しているのですが、会社が社会保険を納付する場合は、届出なども必要となりますし、様々なメリットを受けられるようになる一方で、設立の登記や定款の作成、議事録の作成など、提出する届出や書類が多くなってきます。また、個人事業主以上に正確な会計処理や帳簿の作成なども必要になってくるため、1人だけで事業をしている場合はこれらの事務負担はかなり負担になってくると考えられます。

個人事業と法人の相違点(おまけ)

法人成りのメリット・デメリットをみてきましたが、最後に個人事業と法人の会計期間に違いを見ていきたいと思います。

まず、個人事業主の会計期間は1月1日~12月31日までで、申告・納付の期限は会計期間の翌年3月15日までです。個人事業主は、事業の利益を所得税として申告するので、一般的な確定申告の期限が申告・納付の期限となります。

一方で法人の会計期間は、任意で決めることができます。会社の設立をするときに社長が自由に会計期間を決めることができます。ただし、設立したときに決めた会計期間は原則として毎期継続して適用しなくてはいけません。会計期間を変更する場合は届出が必要となります。

また、法人の申告・納付の期限は決算日から2ヶ月以内と決められています。

4月末が決算日だった場合、2か月後の6月末が申告期限となります。

法人の決算が12月31日だった場合は、2月末が申告の期限となります。個人の所得税のように3月15日までの期限ではないのでご注意ください。

まとめ

今回は、法人成りのメリット・デメリットについて見ていきました。

はじめに述べたように、それぞれの事業の状況によって法人成りするべきかの判断はことなりますが、今回の記事がその判断の参考になれば幸いです。

また、法人成りの判定や実際に法人成りをしていく手続き、法人としての会計処理や申告などはとても複雑で、判断に迷うことも多いです。

特に、事業を始めたばかりの場合は、金銭的にも事務作業的にも法人成りが大きな負担となることも多いです。ある程度、事業が落ち着いてきた、もしくは売上が安定してきた段階で法人成りするのも良いと思います。

事業を始めようとしている、事業を始めているあるいは事業が安定してきて法人成りを検討しているという場合には、事前に会計事務所などで相談をしてみてはいかがでしょうか?

法人の損害賠償金の取扱いについて

今回は、法人である会社の損害賠償金の取扱いについてみていきたいと思います。

まずは、法人が損害賠償金を支払った場合の経理処理についてです。会社が何らかの原因で損害賠償金を支払った場合、支払ったすべての損害賠償金を損金として計上できるわけではありません。

そこで、支払った損害賠償金が損金算入できる場合と損金算入できない場合、また損金算入できる場合の損金の計上時期についてみていきたいと思います。

① 支払った損害賠償金を損金算入できる場合

 損害賠償金を損金として計上できるかどうかは、「業務に関するものか」と「会社の役員や従業員の過失によるものかどうか」がポイントとなります。損害賠償金の対象となった行為等が会社の業務の遂行に関連するもので、会社の役員や従業員に過失がない場合は支払った損害賠償金を損金として処理することができます。

② 支払った損害賠償金を損金算入できない場合

 前提として、支払った損害賠償金が法人の業務の遂行に関連するものでない場合は損金算入できません。また、業務の遂行に関係がある場合でも、会社の役員や従業員に過失が認められた場合の損害賠償金も損金算入することはできません。

このような場合の損害賠償金を会社が支払った場合には、その損害賠償の対象である法人の役員もしくは従業員への貸付金となります。

 しかし、役員もしくは従業員から損害賠償金の返済がされない場合、役員もしくは従業員に支払い能力がないと認められるときは損害賠償金分の貸付金を貸倒れ処理することができます。役員もしくは従業員に支払い能力が認められる場合にはその役員もしくは従業員への給与として処理されます。

 次に、こられの損害賠償金の損金計上時期についてみていきたいと思います。原則として、損害賠償金を支払ったときに損金を計上することが認められています。しかし、この「支払った時」以外に計上が認められている場合もあります。例えば、自動車事故等が発生した場合事故の発生から示談等までの成立に時間がかかるときは、示談等の成立前で損害賠償金の支払前であっても、その支出の日の属する事業年度の損金の額に算入することができると認められています。

 もう一つ、信号無視やスピード違反などをしたときの交通違反金についてもみていきたいと思います。役員や従業員の交通違反金を会社が支払った場合、業務上の交通違反金であっても損金計上はできません。会社の業務上で交通違反金を支払った場合は租税公課で計上し、法人税申告書で調整することになります。もし、業務外の交通違反金を会社が支払った場合は、その役員もしくは従業員への貸付もしくは給与として処理します。

 ただし、交通事故等でレッカー代や交通費などが発生した場合には、その事故が業務上のものであれば、損金として計上することができます。その事故が会社の業務外の場合は、事故等のレッカー代や交通費などを損金として計上することはできず、交通違反金と同様に当事者への貸与もしくは給与として処理することになります。

 それでは逆に、会社が損害賠償金を受取った場合の処理についても考えてみたいと思います。会社が何らかの損害を受け、損害賠償金を受取った場合は損害賠償金の確定した日もしくは支払いを受けた時に雑収入として処理します。

 このように、損害賠償金はその賠償金が業務上のものなのかによって損金として計上できるかが変わってきます。損害賠償金の支払いなどはあまり頻繁にはないものだと思いますが、支払いがあったときにはその賠償金の内容をよく検討したうえで損金計上するようにしましょう。また、損金計上する場合には賠償の内容等を記録として残しておくと税務調査等があった場合に対応しやすいでしょう。

「ギャラ飲み」の確定申告について

最近、「ギャラ飲み」という言葉を良く聞くようになりました。

「ギャラ飲み」の仲介をする専用アプリがあり、誰でも簡単にギャラ飲みに参加できるようになり、副業やお小遣い稼ぎとして「ギャラ飲み」で収入を得ているという方も増えてきているのではないでしょうか。

最近のギャラ飲みは、参加する女性も男性もギャラ飲み専用の仲介アプリを使うことが多く、男性がアプリに謝礼としてお金を支払い、参加した女性が謝礼としてアプリからお金を受取るという仕組みが多いようです。

アプリを通してのお金のやり取りなので直接現金をやり取りするよりも安心できる、アプリを使ってギャラ飲みの情報を簡単に調べられる、アプリの運営から様々なサポートがあるなど、誰でも気軽にギャラ飲みに参加しやすくなってきています。

そこで、今回はギャラ飲みで得たお金(謝礼)は、確定申告が必要なのか、ギャラ飲みの収入を申告しなかった場合にどのような問題があるのか、ギャラ飲みで得た収入が税務署に発覚することがあるのか、といったギャラ飲みで得たお金の確定申告ついてみていこうと思います。

「ギャラ飲み」で得たお金は確定申告が必要なのか?

結論から言うと、「確定申告が必要な場合がある」ということになります。

では、どのような人が確定申告をする必要があるのか詳しく見ていきたいと思います。

「ギャラ飲み」の所得を申告する必要があるのは、下記の①・②のどちらかにあてはまる方です。

①本業(年末調整をしている)+副業(ギャラ飲み等)の年間所得が20万円超の方

本業の会社で年末調整をしていて、ギャラ飲みなどの副業の所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。

「所得」というのは「収入(貰ったお金)」から「経費」を引いた金額のことを言います。

つまり、20万円以上お金をも貰っていた場合でも、経費を引いた残りの利益が20万円以下だった場合、会社員の方は確定申告の必要はありません。

ここでもう一つ注意しなければならないのは、副業の所得はすべて合算して計算するということです。たとえば、副業としての「ギャラ飲み」での所得が15万円+「食品の配送(ウーバーイーツ等)」での所得が15万円だった場合に、「ギャラ飲み」で得た所得と「食品の配達」で得た所得はそれぞれでは15万円ですが、合計すると30万円となるため、会社員の方でも確定申告が必要となります。

会社で働きながら、いくつかの副業で収入を得ているという場合も多いと思います。その場合はそれぞれの副業の収入や経費をまとめておいて、1年が終わったら年間(1/1~12/31)の所得を計算し自分が確定申告をする必要があるか確認するようにしましょう。【会社員の副業と確定申告

②ギャラ飲みが本業でギャラ飲みの年間所得が48万円超の方

こちらは、ギャラ飲みを本業として収入を得ている場合です。

収入がギャラ飲みだけの場合には、年間(1/1~12/31)の所得が48万円超の場合に確定申告が必要となります。

「収入(貰ったお金)」から「経費」を引いた所得金額が48万円以下の場合は確定申告の必要はありません。

「ギャラ飲み」で得たお金を申告しなかったらどうなるのか?

上記ではギャラ飲みで収入を得たときに確定申告が必要な場合を詳しくみてきましたが、次はギャラ飲みで得た所得を申告しなかった場合はどうなるのかを見ていきたいと思います。

ギャラ飲みの所得を申告しなかった場合、「無申告加算税」もしくは「重加算税」と「延滞税」などがかかります。

①無申告加算税

無申告加算税とは、名前の通り、無申告だった場合に加算される税金のことです。

50万円までの部分に15%、50万円を超える部分に20%の加算税がかかります。

本来納めるべき所得税が100万円だった場合は、

(50万円×15%)+(50万円×20%)=17.5万円となります。

つまり、本来納めるべき所得税100万円に加算に17.5万円を加算して納付しなければなりません。

②重加算税

重加算税とは、税金のペナルティの中で最も重いとされているペナルティと言われています。所得があったものの、申告していなかった場合は①の無申告加算税が課されますが、故意に「隠ぺい・仮装などの行為」によって、所得を隠していたと判断された場合には、無申告加算税の代わりに重加算税が加算されます。この重加算税の計算方法は状況によって異なりますが、最大で本来納めるべき税額×40%が加算される場合があります。

しかし、申告していなかったからといって、必ず重加算税が加算されるとは限りません。

個人の状況や税務調査への協力、証拠となる資料など様々な状況を考慮して判断されます。

また、①の無申告加算税と重加算税が同時に加算されることはありません。申告をしていなかった場合には、無申告加算税か重加算税のどちらかが加算されます。

③延滞税

延滞税とは、本来納めるべき税金を決められている期限までに納付しなかった場合に加算される加算税のことをいいます。所得税の場合は、原則3月15日までに申告と納付をしなければなりません。

納付の期限までに税金を納めなかった場合には、納付の期限から2カ月を経過する日までは原則として年7.3%、2カ月を経過した日以後は原則として14.6%の延滞税が加算されます。(延滞税の計算は大変複雑で、他にも加算される場合がありますが、今回は延滞税の基本的な利率のみを説明していきます。)

つまり、去年申告をしておらず、本来納付すべき所得税100万円を1年間納付していなかった場合は、

①100万円×7.3%×2/12=約1.2万円

②100万円×14.6%×10/12=約12,1万円

①+②=約13.3万円

本来納める税金に約13万円を加算して納付しなければなりません。

もちろん、延滞税は納付をしていなかった期間が長ければ長いほど加算される税額が大きくなります。

このように、ギャラ飲みで得た収入を申告していなかったことが発覚した場合、本来納めるべき税金に加えて、無申告加算税もしくは重加算税、加えて延滞税などの様々な加算税を納付しなければいけません。

本来納めるべき所得税に加算税を加えた高額な税金を納めなければならないという事態を避けるためにも、自分が確定申告をする必要があるかしっかり確認しましょう。

「ギャラ飲み」で得たお金を申告しないと税務署にバレるのか?

上記では、ギャラ飲みの所得を申告しなかった場合のペナルティについて説明しましたが、ギャラ飲みでお金(謝礼)を貰っても、税務署にバレないのではないか?と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、最近はギャラ飲みをギャラ飲みの仲介アプリを通して行っている場合が多く、そのような場合は、アプリを運営する会社に税務署の調査が入り、報酬を受け取った側が申告をしているかチェックすることがあります。また、アプリや仲介の会社ではなくても、ギャラ飲みの仲介をしている個人に税務署から調査が入り、そこからギャラ飲みの謝礼として支払ったお金を受取った側がきちんと申告しているかチェックされる可能性もあります。

特に、近年は税務署もギャラ飲みをはじめとする副収入の申告について厳しくチェックしている傾向があります。

自分ではお小遣いのような感覚で貰っているお金かもしれませんが、仲介会社や支払先などの調査から所得が発覚する可能性は十分にあります。

まとめ

ギャラ飲みの収入があった場合に、確定申告をしなければいけない所得の金額というのは各個人の状況(会社員や個人事業主等)によって変わってきます。

また、何年も申告をしていなかった場合には、原則としては過去3年分(最大過去7年分)まで所得を調べて本来納めるべき税金とそれに係る加算税の計算がされます。

しかし、申告期間を過ぎてからでも自分から申告・納付をすれば加算税が減額される可能性があったり、期限を過ぎた場合であってもできるだけ早く申告・納付をすることで延滞税が加算される期間が短くなったりするため、基本的に自分から申告をすることが大切です。

過去にギャラ飲みなどの副業を得ていたけれど申告していなかったという方や、副業としてギャラ飲みなどの収入を得たけれど、どのように確定申告したらよいかわからないという場合は、ぜひ税理士へ相談してみてはいかがでしょうか?

注意点

今回の内容はあくまでも所得税法上での場合になります。市区町村に納めている住民税については、金額にかかわらず所得がある場合には申告をする必要がありまのでご注意ください。また、ふるさと納税(ワンストップ特例適用外)や医療費控除、住宅ローン控除の適用を受ける場合は副業の金額に関係なく所得を申告しなければいけません。