節税対策

自宅で開業!経費になる費用と仕訳の計上方法

 自宅を事務所として個人事業主もしくは法人として事業を始めた、もしくは会社として事務所を借りているが自宅でも事業の仕事をしているという方は多いのではないでしょうか?

特に、事業を始めたばかりのときは規模がまだあまり大きくなかったり、事務所を借りる家賃代も負担になったりと自宅を事務所として事業を行うことも多いと思います。

自宅で事業を行っている場合、どのような支出を費用として計上することができるのか気になりますよね。

そこで、今回は自宅で事業をしている場合に、一般的に経費となりやすい支出やその費用の計上方法などを具体的に見ていこうと思います。

また、経費として計上するためには、支出した日付や金額、支払先などが記載された領収書やレシート、受領証などが必要となります。最近は、ネット上で請求書を確認するという場合も多いと思いますが、そのような場合は紙で印刷しておく、PDFで保存しておくなどして、資料をすぐに確認できるようにしておきましょう。

具体的に経費として計上できる支出としては、

〇水道光熱費・通信費(インターネット・携帯電話代)

〇自宅の家賃(賃貸の場合)

〇自動車に関する費用(自動車・自動車税・ガソリン代・駐車場代等)

〇事業で使う備品関係(パソコン、プリンター、インク等)

〇自宅で仕事の関係者と打ち合わせのために飲食した場合の飲食代

などが考えられます。

ただし、事業の経費として計上するためには、「事業のために必要な支出」であることが前提となります。

自宅で事業をしている場合には、水道光熱費などは経費に計上して問題ありません。

しかし、たとえば、自宅で事業の作業がすべて完了するため事業では自動車を使わないという場合は自動車関係の費用を経費として計上することはできません。

では、それぞれの支出についてもう少し詳しく見ていこうと思います。

〇水道光熱費・通信費(インターネット・携帯電話代)

自宅で事業をしている場合、基本的に水道光熱費や通信費などは経費として計上できます。

ただし、支払った電気代・ガス代・携帯代などの全額を経費として計上することはできません。電気代やガス代、通信費などのように事業分と個人分が混同している支出については、支払った金額のうち事業で使った部分のみを経費として計上することができます。

詳しい仕訳の計上方法などは、後ほど詳しく見ていこうと思います。

(ただし、会社名義の携帯電話の場合は通信費や端末代金などを全額経費として計上できます。)

〇自宅の家賃(賃貸の場合)

自宅で事業をしている場合、毎月の家賃も経費として計上することができます。

ただし、先ほどの水道光熱費や通信費と同様に事業で使っている部分のみを経費として計上しなければなりません。

また、自宅を賃貸契約している場合は家賃の一部を経費として計上できますが、持ち家で住宅ローンを組んで住宅ローン控除の適用を受けている場合には事業として計上できる割合が決まっています。事業割合が多いと住宅ローン控除が受けられなくなる可能性があります。事業用の経費と住宅ローンについては、別の記事で詳しくまとめているので、ぜひそちらも確認してみてください。

住宅ローン控除制度と事業用経費について

〇自動車に関する費用(自動車・自動車税・ガソリン代・駐車場代等)

自宅で事業をしていると、自分の自動車を事業で使うという場合も増えてくると思います。取引先へ行くときや事業に必要な物品を購入するときなどに自分の自動車を使っているという場合には、自動車に関する支出についても事業で使っている部分について経費として計上することができます。

自動車に関する費用とは、自動車本体を固定資産として計上して減価償却費を計上する以外にも、ガソリン代や駐車場代や自動車保険、自動車税なども事業で使っている部分を経費として計上することができます。

〇事業で使う備品関係

事業として使う備品などについては自宅に置いてある場合でも、全額経費として計上できます。パソコンやプリンター、事業で使う机やイス、ラックなども経費として計上できます。

〇自宅で仕事の関係者と打ち合わせのために飲食した場合の飲食代

自宅で打ち合わせをした場合などは、その時の飲食代なども経費として計上できます。飲食代を経費として計上するときのポイントは打ち合わせや会議のときの飲食だったかという点です。最近は、ZOOMなどオンラインでの会議や打ち合わせも多く、家で自分1人分だけ飲み物や食事などを購入する場合もあると思いますが、1人分のみであっても、オンラインでの会議や打ち合わせ時の飲食であれば経費として計上することができます。

飲食代を経費として計上するためには、飲食の領収書(レシート)と一緒に打ち合わせを行った時間と相手を記録しておく必要がありますので、領収書と一緒にいつ誰と行った会議の飲食代かもわかるようにしておきましょう。

基本的に家族で使う日用品の購入や飲食代など事業と関りがない支出については経費として計上することができません。経費として計上したい場合には、支払った時の領収書やレシート、受領証などをしっかり保管しておくようにしましょう

次は、自宅で事業をしているときであっても、経費として計上できない支出について見ていこうと思います。

〇個人の飲食代

自宅で仕事をしていて軽食をとるということもあると思います。仕事中の飲食であっても、自分1人のための飲食代は経費として計上することはできません。

ただし、仕事の関係者と飲食をした場合や打ち合わせをしたときのコーヒー代などは経費として計上できます。

〇仕事でも私用でも使う洋服代

自宅でリラックスして仕事をするためにルームウェアなどを購入する場合もあるかもしれませんが、これらの洋服代は経費としては計上できません。

ただし、仕事でしか使わない衣服や従業員を含め仕事用のユニフォームとして洋服を購入した場合や会社の名前などを刺繍した衣類を購入した場合などは経費として計上できます。

これまで、事業分と個人分が混同している支出は、事業で使った分だけを経費として計上できると書いてきましたが、では実際にどのくらい経費として計上できるのか見ていきたいと思います。

支出した費用を事業分と個人分に按分することを家事按分といい、この家事按分の事業用と個人用の割合については明確な規定はありません。

それぞれ事業での使用量や使用頻度などから自分で合理的に妥当な割合を決めることになります。

ただし、自由に決められるといっても、合理的に認められる割合で、税務調査などで質問されたときにある程度説明できる按分割合を決める必要があります。

家事按分の決め方の目安としては、自宅で仕事をしている日数や時間、家賃の場合は事業のために使用している面積などを参考とすることが多いです。

インターネット代として1か月で1万円支出して、ほぼ半分くらい事業で使っているという場合は「事業用50%:個人用50%」としてインターネット代として支払った1万円のうち50%の5,000円を経費として計上できるということになります。

電気代・ガス代・水道代・インターネット代などの事業分と個人分が混同している支出については、それぞれの事業の実態に応じて事業での使用割合を決めるようにしましょう。

先ほど、家事按分の事業用と個人用の割合は事業での利用頻度や使用量などに応じてそれぞれ決めることができると説明しましたが、次は、事業用と個人用が混同した支出の仕訳の方法について詳しく見ていこうと思います。基本的に、事業で使用した分の費用が計上されていれば問題ないため、いくつかの仕訳の方法があります。

今回は通信費として毎月10,000円支払っており、事業での使用頻度から、支出した金額のうち50%を事業用として費用計上したい場合の仕訳方法を見ていこうと思います。

(今回の仕訳は個人事業主の場合の仕訳を例にあげています)

①毎月の支出額を事業分と個人分に分けて計上する方法

毎月、支出をした費用を事業分と個人分に分けて経費計上する方法です。

毎月の仕訳の入力が多少煩雑になりますが、毎月の経費や利益を正確に把握することができます。

毎月の仕訳数が少ない場合は、このように毎月支出を家事按分しても良いですが、仕訳数が多くなると仕訳の入力が煩雑になります。

②毎期末に年間の支出額を事業分と個人分に分けて計上する方法

こちらは、毎月の支出額の全額を経費として計上して、期末に経費から個人利用分を引くという計上方法です。

年間の支出金額を見てから、家事按分の割合を決めることができ、毎年期末に個人利用分の仕訳を計上すればよいので、仕訳の入力が①よりも簡潔になります。

③毎月(毎期末)事業用の経費分のみを費用として計上する

こちらは、個人の資金から支払った支出のうち、事業用部分のみを経費として計上するという方法です。

この仕訳方法でも問題はありませんが、実際に支払った通信費の支出額がわからないため、会計データを見たときに、家事按分の割合がわかりにくいという問題点があります。

①~③までのどの方法で経費を計上しても、会計上は問題ありません。

自宅の水道光熱費や通信費、家賃などを経費として計上する場合には、事業用の資金から水道光熱費や通信費、家賃などの支払いをして、個人分は仕訳で事業用の費用から引くという①・②の方法と個人のお金から水道光熱費や通信費、家賃などを支払い仕訳で事業用の経費部分を計上するという方法があります。

事業用の資金から支払っても、個人分の資金から支払ってもどちらでも問題ありません。

ただし、年間の支出額を確認してから家事按分を決めたい、後から見たときに家事按分の割合がわかるようにしておきたいという理由で①・②の計上方法を採用している場合が多いです。

今回は自宅で事業をしている場合に経費として計上できる支出や経費として計上できる費用の具体的な仕訳方法などを見てきました。

また、今回紹介した支出以外でも、事業で使っている支出については経費として費用計上できます。自宅で事業をしていると、意外と色々な支出を経費として計上することができますが、支払った支出に事業分と個人分が混ざっている場合は、家事按分をする必要があり、また、経費として計上できるか判断が難しい支出なども多くあると思います。

費用として計上できる支出について詳しく知りたい、仕訳の計上方法を知りたいという場合には、会計事務所へ相談することをおすすめします。

個人が開業するメリット・デメリット

以前の記事では、個人で事業を開業するときに必要な届出についてみていきました。

事業を開業するときに提出する開業届や事業開始等申請書などは、明確な提出期限がなく、届出を提出するタイミングがわからないという場合も多いと思われます。

そこで、今回は個人が開業届を提出して事業を始めた場合のメリットとデメリットをそれぞれ見ていきたいと思います。

開業届を提出して開業をするメリット

①青色申告をすることができ、青色申告特別控除がうけられる

開業届を提出することによって、青色申告承認申請書も提出することができるようになります。青色申告では、複式簿記で作成した決算書等を期限内に提出することによって最高55万円(電子申告の場合は65万円)の所得控除を受けられます。 白色申告の場合は、このような所得控除はありません。

また、開業届を提出しないと、青色申告特別控除申請書の提出はできませんので、青色申告特別控除を受けるためには、開業届と青色申告特別控除申請書の両方を提出する必要があります。(実際には、開業届と一緒に青色申告承認申請書を提出する場合が多いです。)

②青色専従者給与を経費として計上できる

白色申告の場合は、専従者給与のうち配偶者は86万円、その他の専従者は50万円までしか必要経費として計上できませんが、青色専従者給与に関する届出・変更届出書を提出することで、配偶者や親族に支払った青色専従者給与を全額必要経費として計上できます。

青色専従者給与に関する届出を提出するためには、開業届と青色申告承認申請書の提出が必要となります。

③損金の繰越しができる

事業で損失が出た場合にその損失の金額を翌年以降3年間繰越すことができます。つまり、1年目の利益がマイナスで2年目の利益がプラスになった場合は、2年目の利益の金額から1年目の損失の金額を控除して所得税を計算することができます。

白色申告の場合は、損失がでても翌年以降への繰越しはできません。

開業届を提出して開業をするデメリット

①失業保険を受けられない可能性がある

失業保険とは、基本的に「再就職を目指している人」が対象となっています。会社で勤めていた時に開業届を提出し事業を始め、その後、会社を辞めた場合は失業保険の給付の対象とはなりません。

 また、失業保険の受給中に開業届を提出して事業を開始した場合も、開業届を提出した時点で失業保険の対象ではなくなり(再就職したとみなされる)、失業保険の給付が終了することが多いので注意が必要です。

 ただし、開業届を提出して事業を開始していても、失業保険の受給の対象となる場合があります。自分が失業保険を受けられるかを知りたい場合は、お住いのハローワークへ確認してみると良いでしょう。

②帳簿の形式が複雑になる

開業届と同時に青色申告特別控除申請書も提出する場合も多いかと思われます。白色申告の場合は単式簿記での記帳が認められていましたが、青色申告は、複式簿記による帳簿の作成が義務づけられるため、会計帳簿の作成が複雑になります。

開業届と青色申告承認申請書を提出し事業を開始することによって、青色申告ができるようになり、青色申告特別控除が受けられたり、損失の繰越しができたりするようなります。他にも届出を提出することで、様々な税金の優遇制度が受けられるようになります。しかし、大きなメリットもある一方で、失業保険が受けられない、帳簿の作成が複雑になるなどのデメリットもあります。

 開業届を提出するかどうかや開業届を出すタイミングについては個人や事業の状況をみて判断することが重要となってきます。

 また、どの届出を提出すればよいかわからない、自分の事業のより効果的な節税方法が知りたいという場合には、開業届を提出する前に会計事務所などで相談してみると良いのではないでしょうか? (今回の記事は2021年11月時点の情報をもとに作成をしております。)

住宅ローン控除制度と事業用経費について

以前、住宅ローン控除について解説しましたが、今回は住宅ローン控除と個人事業主の事業用の経費との関係を見ていきたいと思います。

住宅ローンを借り入れると、住宅ローン控除を受けることができます。

住宅の取得時期や住宅の種類によって期間や上限などは変わってきますが、今回は一般的な住宅の取得で住宅ローン控除の適用期間が10年以内の場合で考えていきます。

住宅ローン控除は、住宅ローン控除の適用を受ける年の住宅ローンの年末残高×1%(上限40万円)の減税を受けられる制度です。

住宅ローンの年末残高が3,000万円の場合は、3,000万円×1%=30万円の減税を受けられます。

基礎控除や配偶者控除、生命保険料控除などは所得控除といわれ、所得金額から控除額を引いて、それぞれの所得税率で所得税を計算しますが、住宅ローン控除は、それぞれの所得税率で計算した所得税から控除額を引くことができます。

そのため、住宅ローン控除の減税の効果は、配偶者控除や保険料控除などの所得控除よりも大きいものになります。

個人事業主は毎年、確定申告で住宅ローン控除の申告をします。確定申告により、その年の納めるべき所得税を計算し、納めるべき所得税が住宅ローンの控除額より少ない場合は住宅ローンの控除の余りの金額が翌年の住民税から減額(上限13万6,500円)されます。

(納めるべき所得税が住宅ローンの控除額より多い場合は、住宅ローン控除額が所得税から減額されるため住民税の減額はありません)

 なお、所得税と住民税を引いても余る住宅ローン控除額の部分は消滅します。 消費税や事業税など他の税金の減額や控除の余りの部分を翌年に繰り越したりはできません

個人事業主の方は住宅の一部を事業で使っていて、住宅ローンの返済額のうち一定割合を経費として計上している場合も多いと思います。 住宅ローン控除は居住用と事業用の割合によって受けられる控除の金額が変わってきます。

居住割合が90%以上の場合

住宅の90%以上が居住用(事業用10%未満)の場合は、住宅ローン控除を全額受けることができます。

居住割合が50%以上~90%未満の場合

住宅の50%以上~90%未満が居住用(事業用が10%以上~50%未満)の場合は、「住宅ローン控除額×住宅用部分の割合」で計算した金額が住宅ローン控除額になります。

住宅ローンの控除額が30万円で住宅を事業用40%・居住用60%で使用している場合には、「30万円×60%(居住用割合)=18万円」の税額控除が受けられます。

居住割合が50%未満の場合

住宅ローン控除とは、あくまでも「居住用家屋」を取得したときの借入金に認められている優遇制度になります。そのため、住宅の50%未満が居住用(事業用が50%以上)の場合は住宅ローン控除の適用外となります。

個人事業主の方が住宅ローン控除の適用を受けるにあたって、居住用と事業用をどのくらいの割合にしたらもっとも有利かは、状況(住宅ローンの借入額や事業の所得金額等)によって変わってきますのでご注意ください。

住宅ローン控除は、原則として住宅ローンの年末残高の1%が税額控除されるため、所得税や住民税の節税に大いに役立ちます。

 しかし、所得税や住民税以外の税金を控除することはできず、また、住宅ローン控除の控除額が所得税や住民税と相殺しても余ってしまった場合は、その余った控除額分は翌年に繰り越すことがでず消滅してしまいます。

 そのため、住宅ローン控除の適用を受ける場合は、個人事業主の方はできるだけ住宅ローン控除の控除額いっぱいまで税額の控除を受けられるように、事業の利益(所得)をある程度残しておいた方より住宅ローン控除を有効に活用できるでしょう。

そこで、ポイントとなってくるのが繰延資産である開業費です。

住宅ローン控除の適用を受けていて、これから個人事業主として開業しようという場合には、税務上、期限の定めがなく繰り延べが認められている開業費をしっかりと開業時に計上するようにしましょう。

 そして、住宅ローン控除の適用期間は、住宅ローン控除で所得税や住民税の減額をして、住宅ローン控除の適用期間がすぎて事業の利益が出てくるようになったら繰延資産に計上している開業費を経費として計上して利益(所得)を減らしていくことによってより効果的に節税をすることができます。

住宅ローン控除で所得税や住民税の減額を受けられるから、今年の事業の利益をできるだけ多く出しておきたいという場合の固定資産の償却についても考えてみます。

個人事業主(青色申告者)を含む中小企業は、「少額減価償却資産の特例」が認められています。

 少額減価償却資産の特例とは、簡単にいうと年間で合計300万円まで、1つあたり30万円未満の資産(パソコンや自動車など)を購入した場合に、その資産を購入した年に全額経費として計上するかもしくは通常の法定耐用年数で毎年均等額を減価償却費として計上していくか選べる制度のことです。

中小企業の場合は、少額減価償却資産の特例を使って30万円未満の資産は購入した年に全額経費として計上してしまうことも多いです。

 しかし、住宅ローン控除の控除額の上限まで使いたいなどの理由で、できるだけ今年の利益(所得)を残しておきたい場合には、30万円未満の資産を法定耐用年数に基づいて分割して経費として計上していくこともできます。

今回は、個人事業主の住宅ローン控除の事業割合に応じた控除額や住宅ローン控除と繰延資産との関係、住宅ローン控除と固定資産の償却との関係などを見ていきました。

住宅ローン控除税制は、とても頻繁に改正があり制度自体も非常に複雑になっています。また、事業の開業時の費用の計上についても色々と難しい部分があるかもしれません。

しかし、住宅ローン控除制度や開業費などの繰延資産を上手に活用すればより大きな節税効果が期待できます。

 住宅ローン控除が難しい、住宅ローン控除を受けていてこれから事業を開業しようと思っているけれど会計はよくわからないといった場合には税務署や会計事務所などに相談してみるとよいでしょう。

 税金の優遇制度や所得控除、税法や会計の特例などを有効に活用して、より効率的に節税をしていきましょう。

(今回の記事は2021年10月時点の情報を基に作成しております。)

住宅ローン控除について

住宅の購入やリフォームのために住宅ローンを借りたときに受けられる「住宅ローン控除」ですが、正式には「住宅借入金当特別控除」と言われています。ここでは、わかりやすく「住宅ローン控除」と呼んでいきます。住宅ローン控除はとても頻繁に制度が変更され、住宅の購入時期によって控除の期間や控除できる金額が変わってくるので注意が必要です。

今回は令和3年の住宅ローン控除税制を基準にポイントや注意点を見ていきたいと思います。

なお、今回の住宅ローン控除の詳細は令和3年10月時点の税制をもとにまとめています。

住宅ローン控除のポイント

① 住宅の購入者(住宅ローンの名義人)の合計所得金額が3,000万円以下であること

住宅ローン控除の適用を受けようとする年の合計所得金額が3,000万円以下の人が住宅ローン控除の対象となります。

合計所得金額とは、事業所得・不動産所得・利子所得・配当所得等々「その年に稼いだ利益(所得金額)の合計」のことをいいます。

そのため、副業をしている会社員や事業をしながら賃貸不動産も所有しているなど複数の所得がある場合は注意が必要です。

② 本年12月31日時点で居住していること

住宅ローン控除を受ける年の12月31日時点で住宅ローンを借りている住宅に居住している必要があります。年の途中で住宅を売却した場合は、その年は住宅ローン控除の適用を受けられません。

③ 住宅を取得した日から6カ月以内に居住していること

一般の住宅(新築、中古住宅の購入等)の場合、住宅を取得して6カ月以内に住宅ローンの対象となる家屋に居住している必要があります。

 ただし、コロナの影響で住宅の取得日から6カ月以内に居住できなかった場合でも証明書の添付によって住宅ローン控除を受けられる可能性があるので、そのような場合には税務署に確認してみると良いでしょう。

④ 住宅ローンの借入期間が10年以上であること

住宅ローンの借入期間が10年以上であることが必要です。

繰り上げ返済をして残りの返済期間が10年未満になっても、借入期間が当初の契約から10年以上であれば住宅ローン控除の適用を受けられます。

ただし、繰り上げ返済により借入期間が契約当初から10年未満になるときは住宅ローン控除の適用外となりますのでご注意ください。

⑤ 住宅ローン控除は納めた所得税が戻ってくるもしくは納めるべき住民税が減額される

確定申告で住宅ローンの申告をするとお金が戻ってくるというイメージがありますが、会社員の方は毎月の給与から所得税を納めていて、その納めた所得税の金額を上限としてお金が戻ってきます。会社員の方でも納めた所得税がなければ、戻ってくる税金はありませんので、確定申告で還付を受けられません。

(確定申告で所得税の還付を受けられなくても、住民税の控除は受けられるため、住民税を納めている人は、所得税の還付を受けられなくても確定申告をするようにしましょう)

 また、住宅ローン控除の控除額を所得税で引ききれなかった場合には、翌年の住民税で控除が受けられ翌年納めるべき住民税が減額されます。

住宅ローン控除の控除額

住宅ローンの控除額は取得した住宅の種類や住宅を購入した時期によって異なってきます。

ここでは、平成26年4月1日以降に一般の住宅の取得等により住宅ローン控除を受ける場合の上限額をみていきます。(住宅ローン控除適用1年目~10年目の場合)

基本的に、「住宅ローンの年末残高×1%」もしくは、「上限額40万円」のどちらか小さい方の金額になります。

つまり、住宅ローンの年末残高が4,000万円超の場合は「40万円」、住宅ローンの年末残高が4,000万円以下の場合は「住宅ローンの年末残高×1%」が控除される金額となります。

住宅ローン控除ができる期間

消費税が10%で令和1年10月1日以降に居住を開始した場合は、13年間住宅ローン控除の適用を受けることができます。

(消費税が10%以外で令和1年9月30日以前に居住している住宅については控除期間が10年間となります。)

住宅ローン控除の申告方法と必要書類

住宅ローン控除を受ける初年度は自分で確定申告を行う必要があります。

会社員の場合、2年目以降は年末調整で住宅ローン控除の申告をすることができます。

① 住宅ローン控除初年度

(1)確定申告書(A・B)

確定申告書はAとBの2種類がありますが、給与所得のみの方(会社員)は

確定申告書A、個人事業主の方は確定申告書Bで申告を行います。

(2)住宅借入金特特別控除額の計算書(税務署や国税庁のHPから入手できます)

(3)住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関が発行)

(4)土地・建物の登記事項証明書(法務局で直接申請もしくはオンラインで申請できます)

(5)源泉徴収票(会社員の方)

(6)売買契約書・請負契約書 確定申告の期限は、控除を受ける年の翌年3月15日までとなります。

②住宅ローン控除2年目以降(会社で年末調整を行う場合)

住宅ローン控除を受ける本人が務めている会社へ書類を提出することにより住宅ローン控除を受けられます。

(1)年末調整のための住宅借入等特別控除証明書(税務署長が発行)

(2)住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関が発行)

住宅ローン控除は制度の仕組みが複雑で税制改正も頻繁に行われるため、難しく感じられるかもしれませんが、会社員の方は2年目以降の住宅ローン控除を年末調整で申告できます。(個人事業主の方は年末調整がないため、毎年確定申告で住宅ローン控除を申告します。)

また、住宅ローン控除は控除される金額が高額になる場合が多いです。 住宅ローン控除の適用を受ける場合は、必ず忘れずに申告するようにしましょう。

住宅ローン控除制度と事業用経費について

償却資産税の取扱いについて

事業を営んでいると、個人の場合には所得税、法人の場合に法人税、そのほかにも消費税や源泉所得税、固定資産税など様々な税金の支払いがあります。

その中で償却資産税という税金をご存じでしょうか?

あまり馴染みのない税金かもしれませんが、償却資産税とは固定資産税の一種で個人事業主や法人が一定の固定資産を所有しているときにかかる地方税です。

今回は償却資産税の対象となる資産やその納付時期、申告方法などを見ていきたいと思います。(償却資産税とは、地方税のため各市区町村により詳細が異なりますが、今回は東京都23区の場合をみていきたいと思います。)

償却資産税の対象となる資産

償却資産税の対象となる資産とは、土地、家屋及び自動車等以外の事業用有形固定資産をいいます。ソフトウェアなどの無形固定資産は含まれません。

基本的には、1つあたりの取得価格が10万円以上で耐用年数が1年以上の有形固定資産が対象となります。

ただし、1つあたりの取得価格が10万円以上20万円未満の資産を一括償却資産として計上した場合には、その計上した資産は償却資産税の対象にはなりません。

(税務上、取得価格が30万円未満で少額減価償却資産として計上した場合は、その資産は償却資産税の対象となるので注意が必要です。)

償却資産税の対象となる資産の具体例

法人や個人事業主が事業のために所有している有形固定資産が償却資産税の対象となるため数多くの資産が対象となりますが、その中でも比較的所有している場合が多いものも具体的に見ていきたいと思います。

パソコン、コピー機、エアコン、調理器具、暖房器具、洗濯設備、音響設備、陳列棚等(自動車は自動車税の対象となるため、償却資産税の対象には含まれません。)

 また、実際に使用していな未稼働の資産や遊休中の資産であっても、賦課期日(1月1日)において事業の用に供することができる状態にあるものは償却資産税の対象となります。

償却資産税の納付の対象となる者

法人または個人事業主で課税標準額の合計が150万円以上の場合には償却資産税の納付義務が発生します。課税標準額の合計が150万円未満の場合は納付の必要はありません。

また、償却資産税の課税標準額の判定は市町村ごとに行うため〇〇市で100万円、××市で100万円とそれぞれの市区町村で課税標準額が150万円未満の場合も償却資産税はかかりません。

償却資産税の申告時期と納付方法

毎年1月31日までに、同年1月1日時点で保有している資産を各都道府県へ申告します。そして、申告及び調査によって市区町村側で償却資産課税台帳が作成されます。この時に、償却資産課税台帳に不服がある場合は審議請求ができます。その後、同年6月ごろに税額が算出された納税通知書が送られてきます。

東京都では通常6月、9月、12月、翌年2月の4回が納期限となります。

償却資産税は法人税や所得税、消費税などのように納付する側(法人や個人事業主)が税額を計算するのではなく、市区町村側で納付額の計算が行われます。

償却資産税の注意点

いくつか償却資産税を申告する場合の注意点をみていきます。
①資産の課税標準額は税込計理の場合は税込み価格、税抜計理の場合は税抜価格となる。
②償却資産税は市町村ごとの申告・納付となるため複数の市町村に営業所や事務所がある場合は各市町村で申告・納付をする必要がある。

市区町村が作成する償却資産課税台帳に不服がある場合は審議請求ができるが、審議請求には期限があり、不服がある場合には、「その処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内」に審議請求をしなければならない。

今回は東京都23区の場合をみていきましたが、償却資産税は都道府県ごとの申告になりますので、実際に償却資産税について確認するときには、自分の申告する市区町村のホームページ等で確認するようにしましょう。

これまで、償却資産税の対象、申告から納付までの流れや償却資産税の注意点などについてみてきました。償却資産税は法人税や所得税、消費税などのように申告書を作成し納付税額を計算する必要はありませんが、保有している資産を報告するときに税込計理か税抜計理かによって申告する取得価格(課税標準額)が異なってきたり、償却資産課税台帳の不服の申出に期限があったりと、ほかの税とは違う注意点があります。 償却資産税についてよくわからないという場合は専門家に聞いてみてはいかがでしょうか

年末調整の仕組みと罰則について

年末調整を行う理由

給与の支払い者(会社)は、毎月の給与の支払時に源泉所得税の税額表に基づいて所得税を給与から徴収しています。

しかし、

①源泉徴収税額表は、年間を通して毎月の給与の額に変動がないものとして作られているが、実際は年の中途で給与の額に変動がある

②年の中途で控除対象扶養親族の数などに異動があっても、その異動後の支払分から修正するだけで、遡って各月 の源泉徴収税額を修正することとされていない

③生命保険料や地震保険料の控除などは、年末調整の際に控除することとされていること

などの理由により、毎月給与から源泉徴収している所得税の金額と給与所得者の年間の所得税額が一致しません。

そのため、年間の給与総額が確定する年末にその年に納めるべき所得税額を正しく計算し、所得税を多く徴収している場合には還付を所得税額に足らない場合は徴収を行います。この一連の手続きを年末調整といいます。

年末調整の時期と期限

年末調整は年間の給与総額が確定した段階で行います。そのため、一般的には12月支給分の給与が確定してから年末調整を行います。

年末調整に関する源泉所得税の納付期限は、事業者が納期の特例の承認をうけていない場合は1月10日、納期の特例の承認を受けている場合は1月20日となります。

それぞれの納付期限までに年間の源泉所得税の計算・納付が完了していなければいけません。(なお、納期の特例の承認を受けるためには届出の提出が必要となります。)

年末調整の対象とならない者

原則として給与の支払いを受けている従業員(パート・アルバイトを含む)は年末調整の対象となりますが、年末調整をしない従業員もいます。

①給与の収入金額が2,000万円を超える人

②2か所以上から給与の支払いを受けている人で、他の勤務先で年末調整を行う人

③年の途中で退職した人

(ただし12月の給与支払い後退職した場合は、年末調整の対象となります。)

④「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出しない人

年末調整で受けられる控除

次に、年末調整で適用される控除についてみていきます。所得控除はいくつかありますが、今回はその中でも比較的よく使われる控除を紹介していきます。

(控除については2021年10月時点の制度を参考にしております。)

基礎控除

本人の合計所得金額が2,500万円以下である場合に本人の所得金額の合計額から48万円を限度として、所得金額に応じた金額を控除できます。

基礎控除の適用を受けるには、会社へ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要です。

配偶者控除

本人(合計所得金額1,000万円以下の人に限る。)に控除対象配偶者がいる場合に、本人の所得の合計額から38万円(配偶者が老人控除対象配偶者の場合は48万円)を限度として、所得金額に応じた金額を控除できます。

配偶者特別控除

本人(合計所得金額1,000万円以下の人に限る。)が生計を一にする配偶者(合計所得金額が48万円超133万円以下の人に限る。)で配偶者控除を受けていない場合には、本人及びその配偶者の所得金額に応じた金額を控除できます。

扶養控除

本人に控除の対象となる扶養親族がいる場合は扶養控除が受けられます。扶養親族とは、本人と生計を一にする配偶者以外の親族又は児童及び老人のことをいいます。主に、生計を一にしている子供(年齢が16歳以上)や親、兄弟などが扶養親族の対象となります。

一般的な扶養親族の場合は、扶養親族一人当たり38万円の控除が受けられます。さらに、扶養親族の状況(扶養親族の年齢や同居の有無)などによって受けられる扶養控除の金額が変わってきます。

なお、所得税の場合は16歳以上の子供が扶養控除の対象となります。16歳未満の場合は扶養控除を受けることはできませんが、住民税の控除の対象とはなりますので扶養控除等(異動)申告書の「住民税に関する事項」の欄に忘れずに16歳未満の扶養親族を記入しましょう。

①特定扶養親族

扶養親族の年齢が19歳以上23歳未満の場合は控除される金額が63万円となります。

②老親扶養親族

扶養親族の年齢が70歳以上で、同居している場合は48万円、別居している場合は58万円が控除される金額となります。

障害者控除

本人、生計を一にする配偶者及び扶養親族が障害者に該当する場合は障害者控除を受けられます。障害の程度に応じて、一般の障害者は27万円、特別障害者は40万円、特別障害者で本人と同居している場合は75万円の控除が受けられます。障害者控除を受ける場合は障害者手帳などで障害の程度を確認しましょう。

また、障害者控除は扶養控除とは違い、16歳未満の子供でも適応されます。

ひとり親控除

本人がひとり親の場合には35万円の控除が受けられます。

保険料控除

本人が本年中に支払った保険料(生命保険及び介護医療保険、個人年金保険)を所得金額から控除できます。ただし、保険料控除には上限がありますのでご注意ください。

保険料控除の適用を受けるためには会社「給与所得者の保険料控除申告書」の「生命保険料控除」の欄に記入をし、「給与所得者の保険料控除申告書」と「生命保険料控除証明書」を会社に提出する必要があります。

また、配偶者や扶養親族の保険料を支払っている場合には、配偶者や扶養親族名義の保険料も控除の対象となります。

地震保険料控除

本人又は本人と生計を一にする親族が所有している家屋・家財に対し本年中に支払った地震保険を所得金額から控除できます。ただし、控除できる上限は5万円で保険の目的が家屋や家財を保険の目的としている必要があります。そのため、自動車保険や家屋・家財以外の損害保険は地震保険料控除の対象とはなりません。

地震保険料控除の適用を受けるためには「給与所得者の保険料控除申告書」の「地震保険料控除」の欄に記入をし、「給与所得者の保険料控除申告書」と「損害保険料を支払ったことを証明する書類(損害保険会社が発行)」を会社に提出する必要があります。

社会保険料控除

本人が本年中に支払った社会保険料を所得金額から控除できます。生命保険料控除や地震保険料控除とは違い、控除の上限額はなく支払った社会保険料の全額が控除の対象になります。また、本人が配偶者やその他の親族の社会保険料を支払った場合も、社会保険料控除の対象となります。

会社が社会保険に加入している場合は、会社が毎月社会保険を納めており、年末調整時に本年中に支払った社会保険料を合算して控除金額を算定します。そのため、従業員が申告書等に記載する必要はありません。

個人で国民健康保険や国民年金を支払っている場合や配偶者や扶養親族の社会保険料控除の適用を受ける場合は、本年中に支払った社会保険料を「給与所得者の保険料控除申告書」に記載して会社へ提出する必要があります。

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

よく住宅ローン控除と言われていますが、住宅ローン控除は正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。本人が住宅の購入もしくはリフォーム等の増改築を行った場合に、住宅借入金等(住宅ローン)の残高に応じて所得控除が受けられます。

ただし、住宅ローン控除の控除期間や控除額の計算方法、控除限度額などは住宅を購入した年によって異なりますのでご注意ください。

住宅ローン控除の適用を受けるためには、適用を受ける初年度は本人が確定申告を行い、控除の適用を受ける2年目以降は年末調整で行うことができます。

2年目以降の住宅ローン控除の適用を受ける場合は、「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書(税務署長が発行)」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を会社へ提出する必要があります。

なお、医療費控除やふるさと納税(ワンストップ納税を除く)は、年末調整では控除されないので、自分で確定申告をする必要があります。

年末調整に関する罰則

年末調整が遅れた場合

①従業員側の理由で年末調整が間に合わなかった・できなかった場合

従業員が扶養控除等(異動)申告書などを提出しないために会社側で年末調整が遅れたもしくはできなかった場合は、会社側では年末調整をせずに、従業員に自分で確定申告をしてもらうことになります。

従業員の書類の提出により年末調整が遅れた場合は、会社側に罰則等はありませんが、従業員が確定申告の申告期限(原則は翌年3月15日)までに確定申告を行わなかった場合には、その従業員に無申告加算税、延滞税が課せられる可能性があります。

(所得税の納付がある場合は、申告期間が翌年2月16日から3月15日までとなります。所得税の還付を受ける場合には翌年1月1日から5年間までならいつでも申告をして還付を受けることができます。)

②会社側の理由で年末調整が間に合わなかった場合

会社側の年末調整が遅れた場合には罰則等はありませんが、年末調整が遅れる場合には税務署へ連絡しておくことをおすすめします。

大幅に年末調整が遅れる場合には、各従業員に確定申告をしてもらう必要があります。

会社側の理由で年末調整が遅れた場合の罰則はありませんが、年末調整を行わなかった場合には会社側が罰則を受ける可能性があるので、期限に間に合わない場合でも必ず年末調整を行うようにしましょう。

年末調整を行わなかった場合

原則として、企業が年末調整を行う義務があると規定されています。

(所得税法第190条~193条)

企業側が年末調整を行わなかった場合には、

〇会社の代表者に対して10年以下の懲役または200万円以下の罰金

(もしくはこの両方)

〇会社に対して200万円以下の罰金

が課せられる可能性があります。

年末調整を行わなかった場合の罰則は会社側に課せられるもので、従業員には罰則等はありません。

以上、年末調整を行う理由や控除の内容、年末調整を行わなかった場合の罰則などについてみていきました。控除を受けられるかの判断が難しい場合もあると思います。自分が控除を受けられるか確認したい場合は経理担当者や税理士などの専門家に確認してみると良いのではないでしょうか。

(今回は、2021年10月時点の税制をもとに記事を作成しております。)

創立費と開業費の取扱い

法人として事業を始めようとするときに、法人の設立から実際に事業を開始するまでの間に法人の設立や開業準備のために様々な経費を支出することになると思います。
法人設立の登記料や登記のための手数料や事務所の家賃、事業で使う机やパソコンの購入なども開業する準備として必要となってくるでしょう。今回は、そんな事業を始めるまでの準備でかかっ た費用の会計処理の方法について紹介していきたいと思います。

法人が開業するときにかかった費用は、一般的に「創立費」と「開業費」という項目に計上されます。

まず、創立費とは「会社設立時の登記にかかる費用」のことをいいます。具体的には、印鑑の購入代、印鑑証明書の発行手数料、登記時の印紙代、定款作成のための代行手数料、定款の認証手数料などのことです。その他にも会社の設立(登記)に関わる費用は創立費に含まれます。

次に、開業費とは「会社設立後に事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」をいいます。会社を設立後、実際に事業を始めるまでに支出した費用が含まれます。具体的には、HPや広告等の宣伝費、事務用品や消耗品、事業のための交通費など開業のために支出した費用のことをいいます。

しかし、以下の①、②のものは開業費に含まれないので注意が必要です。

① 車やパソコンなどの備品で10万円以上のもの

備品等のうち、1つあたり10万円以上のものは開業費ではなく固定資産として貸借対照表上に計上して、減価償却をして費用として計上していきます。

② 毎月経常的に支払う社員の給与や水道光熱費

開業費とは、開業準備のために「特別に」支出する費用のことをいいます。そのため、開業後も毎月経常的に支出される社員の給与や水道光熱費などは開業費には含まれず、支出したときに経費として計上することになります。

創立費と開業費の具体的な違いは、創立費は法人の設立に関する支出であること、そして、開業費は会社設立後からの事業を開始するまでの支出であるという点です。

創立費は法人の設立に関する支出、一般的には法人の設立登記に関する費用のことをいいます。一方、開業費は会社設立後から事業開始までの支出とおおよその期間が定められていますが、その内容などはとくに決められていません。事業を開始するために支出した費用のうち、登記に関するもの以外は基本的にすべて開業費に含まれます。

次に、創立費と開業費の会計処理に考えていきます。

 創立費・開業費ともに、資産として貸借対照表の繰延資産の部に計上されます。会計上の償却期間は5年とされていますが、法人税法上は任意償却が可能となっています。

つまり、創立費も開業費も支出した金額の範囲内であれば、いつでも自由に償却(費用として計上)することができます。

法人の設立当初は、まだあまり利益が出ていないことも多いかと思います。法人を設立後、利益が出るようになってから創立費や開業費の償却をしても問題ありません。

基本的に法人が費用を支出したときには、支出した期に計上することが一般的ですが、開業費や創設費は繰延資産として計上でき、また償却も比較的自由にできる少し特殊な勘定科目と考えられます。そのため、創立費や開業費などを正しく計上できれば法人の節税効果も期待できます。

また、事業を開始する前の支出で創立費や開業費に含まれない費用(法人の設立前に支出した費用など)は、設立した期の経費として計上することができます。
ただし、創立費や開業費を法人の経費として計上するためには、レシートや領収書などの内容や金額等がわかる資料が必要となります。

ここまで、開業準備にかかる費用の会計処理についてみてきましたが、開業の準備中はなにかと支出も多く創立費や開業費の判断が難しかったり、また会計や経理以外にも多くの仕事があったりするかと思います。そこで、後になって開業時の創立費や開業費を繰延資産として計上しておけばよかったと後悔しないためにも、開業を考えている場合には、事前に専門家のアドバイスを聞いてみてはいかがでしょうか?