年: 2020年

中小企業は尖っていけ!!

平成28年度における日本の企業数は全体で385万6457社です。(平成28年経済センサス‐活動調査)

企業はその国の経済活動を担っています。

経済活動とは何でしょう?

つきつめると、それは投資と回収の連続性ではないでしょうか

100円でモノをつくって、150円で売る

その50円の部分が経済活動の成果のひと過程です。

その50円の利益を作り出すために投資をし、モノが販売されることによってその50円が回収され、そのお金を元手にまた投資をしていくわけです。

日本の企業数は全体で385万6457社ですが、そのうちの99%以上が中小企業ということになります。

私も新卒から8年ほどはそんな中小企業で働いていました。そこは大手メーカーを元請けにして、中国関連工場で電子部品の加工などをしていたのですが、私には不思議でたまらないことがありました。

「なんで、これメーカーがやらないのだろう?」と。

中小企業に比べたら、一部上場企業のメーカーのほうが豊富な資金や技術があり、人もいます。うちに仕事をくれる意味とは何なのだろう、と。

経済活動とは投資と回収の連続なのですが、投資には必ずリスクがあります。

今では人件費関連の高騰などにより、むしろ中国に中小企業が進出して仕事をするメリットは少なくなってしまいましたが、当時はそれなりにメリットがありました。
とはいえ、大手メーカーは豊富な資金力や人材はあっても、複雑なローカルルールや現地での材料調達、現地での雇用などのノウハウが蓄積していません。そんな中で大量の設備や人を投入して、工場を稼働させて、うまく運用できなければ大きな損失をこうむるわけです。そして大きな会社の場合には誰かがその損失の責任をとらなければいけないわけです。
投資とは機械設備などを導入する、人を雇う、などのお金を支払うことだけではありません。

それと同じくらいノウハウや知識の積み重ねが重要です。そしてそのノウハウや知識の積み重ねには少なからず時間が必要となります。

結局、当時私が勤めていた中小企業は、そんな大手が投資しきれない現地でのローカルルールや経営方法に投資をした結果として仕事をいただけていた部分が大きかったわけです。

中小企業が汎用性が高いものを作って安く販売するということで大企業には絶対に勝てません。

例えば中小の家具メーカーは、イケヤやニトリの家具に単純な販売価格の安さで勝つことはできないでしょう。ブランド力でも欧州のメーカーなどに勝つことはなかなか難しいかもしれません。

しかし例えば、子供が乗っても壊れない丈夫な食器棚を作るなど、家具にとって非常に大事な性能面で上回っている商品を作ることには長けていたりするのです。長く使えることによるコストパフォーマンスが大手との差となり、顧客からの信頼を集めていたりするわけです。ここにその中小企業がどこに投資を集中してきたのか、ということが如実に表れてきます。

「選択」と「集中」という言葉は、仕事をしていれば何度も聞くことがあると思いますし、どの業界や業種、企業の大小を問わずに、それぞれの立場に基づいて重要視されています。

中小企業で「選択」と「集中」の意思決定をする場合、そこで働く経営者、従業員の経験と積み重ねによる部分が大きいです。

その知見に基づき、大手企業、その他競合に勝てる分野に、「ひと」「かね」「もの」の経営資源を投入し、これだけは負けないというような市場のなかで尖った個性を出し続けることが、中小企業の存在理由になるのではないでしょうか。

自分たちの価値が何なのかを知るために、まずは可能な限り競合企業の研究をすることが大事になります。それが地理的な制約をうける場合には、どこでどのようなサービスを展開していくのか、などが重要になるでしょう。そこに他とは違う尖った価値を探してみるのが一番わかりやすいのかもしれません。

ぜひご自身の会社または事業の「尖った価値」の発見に取り組んでみてください。必ず見つけられるはずです。

中小企業の最終的な目標、目指すべき場所

失敗しづらい起業

 「せっかく起業したものの全くうまくいかず、借金で首が回らず事業を畳まざるをえなくなった」

 こんな不幸話はどなたでも社会人として仕事をしていれば何度か耳にすることがあったのではないでしょうか?

 これから事業をはじめようとする起業家の方々にとって、こういった風の噂できくような不幸話もとても他人事とはおもえないでしょう。もしも許されるなら「どうしてうまくいかなかったのか。」などということも根掘り葉掘り聞きたくなってしまうのではないでしょうか。しかし実際にはそんなことはなかなかかないません。私自身、独立にあたり色々な諸先輩方のお話を聞きました。当たり前なのですが、成功された方から色々なお話聞けるのですが、その逆となるとなかなか難しいのが現実です。

 中小企業白書によると、2005年の中小企業白書をみると、会社を設立してから1年後の存続率は70%程度です。3割程度の方が何らかの理由で1年以内に会社をたたまざるをえない状態におかれます。これを多いとみるか、少ないとみるかは人それぞれだとは思いますが、決して無視ができない数字であることは確かなのではないでしょうか。
また当然ですが、設立からの年数が経てばそれだけ存続していられる法人の数も減っていきます。

 世の中には様々な独立起業者向けの書籍やWEB上の情報があります。それは様々な職業の方からみた経験に基づくアドバイスです。ぜひ自分が起業しようと業種について必要な情報の取集につとめてみてください。

 世の中のサクセスストーリーをみていると、起業家の成功パターンは実に千差万別のように思えます。

 パナソニックの創業者松下幸之助氏のように小学校を中退せざるをえず、丁稚奉公の経験を経て自宅で家族と事業を起こす方や、スティーブ・ジョブスのように悪友ともいえるような友人と自分たちの製品で勝負するために私財を売り払って起業する方もいます。

 彼らは経営の世界のスーパースターたちなのであまり参考にならないのかもしれません。

 プロ野球の野村克也監督の「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という

 有名な言葉がありますが、良い言葉だなと今でも思い返したりしています。

 これを起業におきかえると、時の運や時代背景などで思いもよらず上手くいってしまう場合はあります。とはいえ、事業が借金して倒産してしまう場合にはちゃんと理由がある、ということではないでしょうか。

 起業での失敗を、会社を興したものの数年で債務を返済できずに回らなくなると定義づけると、会計業界で多くの起業家の方々のお手伝いをさせて頂きました私の経験では、失敗しづらい起業家の方はわりにはっきりしています。

 「業務経験」と「少ない固定費からはじめる」

 本当にごく当たり前の話なのですが、非常にシンプルです。

 つまりは起業する業務の経験をしっかりと積んでいて、かつ少ない固定費から企業を始められる状態です。

 「業務経験」

 金融機関が創業融資にあたり、「事業の業務経験」をとても重視するのですが、それにもしっかりとした理由があるわけです。

 当然、豊富な経験があるような事業のほうが成功しやすいのは誰だってわかることでしょう。

 とはいえ、起業する方のすべてが、何年も雇用の立場で修業期間を経て独立するかというとそうでもないです。

 例えば、自宅でひっそり副業としてやっていたECサイトを本格的に事業にしていきたいという方もいらっしゃりますし、普段はサラリーマンとして勤務しながら週末や夜だけ飲食店で板前の修業をさせてもらって起業された方などもいます。

 大切なことは自分の事業を試行錯誤し、ブラッシュアップさせるだけの時間をつくることです。

 「少ない固定費からはじめる」

 いよいよ創業だ、となると、どうしても欲張りになりがちになります。「綺麗な駅近オフィスを借りたい、とか最新の設備が欲しい」などなど
 ある種の気負いもありますし、場合によってはどうしても必要なことがあります。
 しかし、どうしても必要がない場合などには、創業時はできるだけ小さい固定費で済むようにしましょう。まずは自宅で済んでしまうような規模から始めるというのが理想かもしれません。とはいえ、業態によってはそんなことはできないでしょうから、できるだけ小さな固定費で事業を始められるように逆算してみてはいかがでしょうか。
 「業務経験」でも書きましたが、結局のところ自分の事業を試行錯誤してブラッシュアップする時間を作るためのものです。

 起業してすぐはなかなか思ったようにいかないものですし、自分が経営者になってはじめてわかることばかりです。とはいえ、資金にも限界があります。

 まずは小さくはいって様子をみる。起業時にはそのための計画をたてましょう。

まとめ

 ごく当たり前の話をしていまいとても恐縮してしまいますが、起業して存続させられる会社の鉄則ともいえる条件です。

 もちろん、最初から狙いがあり、その狙いがしっかりと当たり、成功していく起業家の方もいらっしゃいます。

 とはいえ、どんなに狙いを定めた計画もうまく成績があがらずに、計画を修正せざるをえなくなることがあります。そこで計画を修正できるだけの資金的な体力があれば問題ないのですが、なかなかそうもいかないのが現実です。

 そう考えると、当初の狙いが順調にいかなかった場合の他のプランニングを実行することができるほどの業務経験と、その修正をすることができるほどの資金的なゆとりを確保することができる少ない固定費から始められる業態というのはリスク分散の観点から極めて重要な課題になります。

消費税にご用心2 ~消費税の納税義務~

個人事業者や法人などで商売を始めると、「売上が1千万円を越えると、消費税を払わなければいけない。」などということ聞いたことがある方は多いと思われます。

この消費税を納めなければいけない義務が「納税義務」といい、納税義務がある事業者を、「納税義務者」といいます。
この納税義務は、原則的には個人事業主の場合には事業をはじめてから2年間、法人の場合にはおおむね2事業年度(事業年度を変更している場合にはやや異なります。)については免除されています。
しかしながら、これには例外があります。

今回は消費税の納税義務の基本的な知識と、これから事業を始めたいという事業者の方や中小企業者の方にむけて、注意しなければいけない例外について大まかに説明していきます。消費税は非常に細かい話が多いので、どういうときに消費税の納税義務に注意をしなければいけないのかをお伝えできればとおもいます。

まず原則的な取り扱いを条文でみていきましょう。

消費税法5条引用(納税義務者)

事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三十条第二項及び第三十二条を除き、以下同じ。)及び特定課税仕入れ(課税仕入れのうち特定仕入れに該当するものをいう。以下同じ。)につき、この法律により、消費税を納める義務がある。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=363AC0000000108_20180410_430AC0000000007#87

消費税法9条(小規模事業者に係る納税義務の免除)

事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=363AC0000000108_20180410_430AC0000000007#87

条文の中で使われている重要な用語として、課税売上高と、基準期間があります。細かい規定はあるのですが、簡単に一言でまとめると以下のようなものになるとここでは思ってください。

課税売上高とは・・・消費税が課される売上高

基準期間・・・個人事業者の前々年、法人の前々事業年度(事業年度の期間を変更していたりすると変わります。)

法律の条文ですので読み取りづらいとは思われますが、要約すると、消費税法5条では消費税がかかるような売上取引をおこなった事業者は消費税の納税義務がありますと定め、消費税法9条では事業者の基準期間の課税売上高が1000万円以下の場合には免除すると定めているわけです。

つまりこの条文の規定により、個人事業者が事業をはじめたり、会社を設立した場合には、多くの場合には2年間ほどは納税義務が免除されます。

ここまで一般的にも知られているような知識ではないかと思われます。

ただし、例外があります。消費税法9条の末尾のこの部分です。


「ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」

では、その例外である、別段の定めとはどんなものがあるのでしょう。

  1. 課税事業者の選択
  2. 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例
  3. 相続があった場合の納税義務の免除の特例
  4. 合併があった場合の納税義務の免除の特例
  5. 分割等があった場合の納税義務の免除の特例
  6. 吸収分割があった場合の納税義務の免除の特例
  7. 新設法人の納税義務の免除の特例
  8. 特定新規設立法人の納税義務の免除の特例
  9. 高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例

こんなに沢山あります。

それぞれ簡単にではありますが、説明していきます。

1.課税事業者の選択

これは事業者が自ら選択して納税義務者となる場合をいいます。多額の仕入れや固定資産の購入や貿易取引を行う事業者は、消費税が還付される可能性が高まりますので、あえて納税義務者になることを選択する場合があります。納税義務者でない場合には、消費税は還付されません。
この規定の適用をうけた事業者は最短2年間ほど原則的には納税義務は免除されません。

またこの規定の適用をうけた期間中に、調査委対象固定資産(商品または製品などの棚卸資産以外のなどの固定資産や権利などで、一取引単価が税抜100万円以上のもの)を購入した場合には最短でも3年間ほど納税義務は免除されなくなります。

よくあるトラブル

税理士の変更や税理士との顧問契約をやめた際、課税事業者の選択をしていることを忘れていていたり、そもそも税理士とのコミュニケーション不足で知らされていなかったりして、課税事業者の選択をうけることをやめる手続きをとっておらず、消費税の納税義務の免除を受けることができなかった。

2.特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例

これは事業者の前年又はその前事業年度(前年又は前事業年度が7か月以下である場合には前々年又は前々事業年度)の開始から6ヵ月の期間の課税売上高が1千万円を超える場合に、その年または事業年度は消費税が免除をされないという規定です。

課税売上高の代わりに支払ったお給料の金額により1000万円を超えるかどうかを判定することができます。

よくあるトラブル

事業をはじめてみたら、想定以上に売上が上がっており、2年間の納税義務の免除をうけることができなくなってしまった。対象となる課税売上高を、お給料により判定することができるので、事業をはじめる段階で検証をすることで対策を講じることができる場合もあります。

3.相続があった場合の納税義務の免除の特例

 相続により事業を承継した個人事業者が、事業の承継元である故人(被相続人)の承継した事業について納税義務があることにより、その個人事業者が納税義務者となる可能性がある規定です。

4.合併があった場合の納税義務の免除の特例

 合併により事業を承継した合併法人(合併後も残る会社)が、事業の承継元である被合併法人(合併で消える会社)の承継した事業に納税義務があることにより、その合併法人が納税義務者となる可能性がある規定です。

5.分割等があった場合の納税義務の免除の特例

分割により事業を設立した新設分割子法人(分割により設立された会社)が、事業を分割した新設分割親法人(事業を分割した法人)の承継した事業に納税義務があることにより、納その新設分割子法人が税義務者となる可能性がある規定です。

6.吸収分割があった場合の納税義務の免除の特例

吸収分割により事業を承継した分割承継法人(事業を吸収した会社)が、事業の承継元である分割法人(事業を承継した会社)の承継した事業に納税義務があることにより、分割承継法人が納税義務者となる可能性がある規定です。

7.新設法人の納税義務の免除の特例

  設立から2年以内の法人で、出資金や資本金額が1千万円以上となる場合には納税義務が免除されない規定です。
  またこの規定の適用をうけた期間中に、調査委対象固定資産(商品または製品などの棚卸資産以外のなどの固定資産や権利などで、一取引単価が税抜100万円以上のもの)を購入した場合には最短でも3年間ほど納税義務は免除されなくなります。

 よくあるトラブル

 豊富な自己資金1千万円を用意して事業をはじめようとしたにも関わらず、思いもよらず消費税の納税義務をおってしまった。

8.特定新規設立法人の納税義務の免除の特例

  設立から2年以内の法人で、その法人の株式の50%以上を保有する個人並びにその親族等やその個人が支配する他の法人などの基準期間相当期間(設立日や事業年度からおおよそ2年~3年前の期間)に消費税の対象となる売上取引が5億円を越える場合、その法人の納税義務は免除しないという規定。

よくあるトラブル

 新しい会社などをはじめて、2年間は納税義務が免除されるものと思っていたが、経営者の事業の経営成績がよく納税義務の免除をうけることができなくなっていた。

9.高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例

 事業者が納税義務の免除されない期間に、商品製品などの棚卸資産を含み、固定資産や権利、自分で建築した建物や構築物で、一取引または一つの成果物が1千万円を超えるものを購入した場合には、その購入した日の属する年や事業年度から3年間程度は納税義務が免除されない規定です。

よくあるトラブル

 事業の開始直後に大量の仕入れや固定資産の購入で、消費税の還付をうけたら、すぐに消費税の免除を受ける予定だったが、この規定により消費税が免除されないことが後になってわかってしまい、資金繰りが厳しくなってしまった。

まとめ

消費税の納税義務が免除されない規定を列挙していきました。

事業を始めたばかりの会社や中小企業にとって特に気をつけなければいけないのは・・・

  • 課税事業者の選択
  • 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例
  • 新設法人の納税義務の免除の特例
  • 特定新規設立法人の納税義務の免除の特例
  • 高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例

この4つではないでしょうか。

場合によっては思わぬ納税義務あるいは納税義務者になったほうがよかったなどということが起きかねません。ご商売の状況や会社の設立時の株も保有状況などについてしっかりと相談にのってくれる税理士を探しましょう。

消費税にご用心 ~消費税の基本的な仕組み~

個人で事業をされている個人事業者や法人として会社を経営されている経営者の皆様であれば商売をしていれば消費税を支払わなければならないということをご存じではなかろうかと思います。

消費税は平成元年4月1日より導入され、大小さまざまな改正を経て、すでに30年以上が経過しています。消費税の導入の目的は、当時から予想されていた高齢化社会にそなえた財源の確保や、所得税や法人税とは異なり取引そのものに課税するため税収の確保がしやすいというものでした。当初は3%程度でしたが、今ではそれも10%となり、今後も伸びていく予想です。

消費税は税法の中でも特異な存在です。それは税の負担者は消費者の方々ですが、実際に消費税を納める納税義務者は商売をしている事業者や会社です。

つまり消費税は、消費者からお預かりした税金を事業者や会社が納税義務者として支払うことで成り立っています。

消費税はこのような特殊な背景があるため税の世界に関りのない方々が個別に税法の条文をみてもなかなか正解にたどり着けない厄介な税法です。

消費税の対象

消費税は国内における消費に対して負担を求める税金です。会社や個人の事業者などが行う商品の販売、資産の貸付、サービスの提供などで代金を支払うことに税金を課すことで、最終的に消費者が消費税を支払う仕組みになっています。

ですので、単純にお金を貸したり、物や金銭を無償で貸したり、あるいは損害賠償金などでお金をもらったりする場合には消費税は課されません。

とはいえ、大体の経済活動は消費税の対象になるのはおわかりになると思います。このように広く消費税の対象をとらえつつ、国では消費税を課税することがそぐわないものや社会的な要請に配慮して限定的に消費税を課さない取引(非課税取引)や外国との国際的なやりとりで2重の税負担とならないように消費税を免除する取引(輸出免税取引)などにより部分的に消費税をとらない又は免除することで様々な調整をとっているのが、現状の消費税という法律の成り立ちです。

仕入税額控除

消費税を負担するのは一般消費者ですべての国民ですが、それを国に納めるのは商売をしている個人事業者や法人である会社などの事業者です。商品代金に消費税を上乗せすることで、事業者が消費税を国民の消費税を預かり、代わりに国に消費税を納めます。

とはいえ、商売のすべてに消費税を課していくだけだと、消費税は膨大に膨れ上がっていきます。

このようなことを防ぐために、仕入税額控除という仕組みを取り入れて、消費者に対する税の過大な負担をしないようにしています。(税の累積性の排除)

仕入税額控除とは、事業者が売上に課された消費税から、仕入れや経費などに課された消費税部分を控除するという仕組です。

消費税法における売上・仕入

消費税法における売上と仕入は、基本的には表裏一体の関係にあります。

①売上→資産の譲渡、貸付、役務の提供

②仕入→資産の譲受け、借り受け、役務の提供を受ける

 消費税には全額控除方式、個別対応方式および簡易課税という税額計算方式があり、それぞれによって売上仕入取引の取り扱いがかなり変わってしまいます。
 法人税や所得税、それらの利益の計算をするための会計などのように画一的な区別はせず、取引ごとの態様が非常に重要です。

 消費税という税金どういうものであるか、大きな枠組みを説明させていただきました。
 消費税は細かい論点が山積しており、かつ大きな損失を受けかねない税金です。商売をされている方にとって厄介な論点ではないかと思われます。消費税について迷うことがあればぜひ税理士にご相談ください。

消費税にご用心2~消費税の納税義務~

特殊!!会社のみなし役員

 会社の税金について定める法人税では、役員報酬を会社の損金にするには厳しい制限があります。

 詳しくは「役員報酬は変えられない!!」をご参照ください。

 また法人税法上の役員は取締役や執行役、監査役や理事などの会社法上の役員に加えて、みなし役員という概念が存在します。みなし役員とは、会社の法律である会社法上の役員に加えて、法人税税法上で独自に役員と判定される人をいいます。

会社法上の役員の範囲

 取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人など、基本的に定款や登記簿謄本などで外部に表示されている方々をいいます。

法人税法上の役員の範囲

 役員の範囲は、法人税法並び、法令、基本通達(行政側の取り扱い)でこのように定められています。(国税庁ホームページ タックスアンサー NO.5200)

 法人税では役員とは次の者をいいます。

  1. 1 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人
  2. 2 1以外の者で次のいずれかに当たるもの
    • (1) 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限ります。)以外の者でその法人の経営に従事しているもの
       なお、「使用人以外の者で、その法人の経営に従事しているもの」には、例えば、[1]取締役又は理事となっていない総裁、副総裁、会長、副会長、理事長、副理事長、組合長等、[2]合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員、[3]人格のない社団等の代表者又は管理人、又は[4]法定役員ではないが、法人が定款等において役員として定めている者のほか、[5]相談役、顧問などで、その法人内における地位、職務等からみて他の役員と同様に実質的に法人の経営に従事していると認められるものも含まれます。
    • (2) 同族会社の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限ります。)のうち、次に掲げる全ての要件を満たす者で、その会社の経営に従事しているもの
      1. イ その会社の株主グループ(注1)をその所有割合(注2)の大きいものから順に並べた場合に、その使用人が所有割合50%を超える第一順位の株主グループに属しているか、又は第一順位と第二順位の株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属しているか、あるいは第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属していること。
      2. 口 その使用人の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること。
      3. ハ その使用人(その配偶者及びこれらの者の所有割合が50%を超える場合における他の会社を含みます。)の所有割合が5%を超えていること。
  1. (注1) 「株主グループ」とは、その会社の一の株主等及びその株主等と親族関係など特殊な関係のある個人や法人をいいます。
  2. (注2) 「所有割合」とは、次に掲げる場合に応じて、それぞれ次に掲げる割合をいいます。
    • (1) その会社がその株主等の有する株式又は出資の数又は金額による判定により同族会社に該当する場合
       その株主グループの有する株式の数又は出資の金額の合計額がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除きます。)の総数又は総額のうちに占める割合
    • (2) その会社が一定の議決権による判定により同族会社に該当することとなる場合
       その株主グループの有する議決権の数がその会社の議決権の総数(議決権を行使することができない株主等が有するその議決権を除きます。)のうちに占める割合
    • (3) その会社が社員又は業務執行社員の数による判定により同族会社に該当する場合
       その株主グループに属する社員又は業務執行社員の数がその会社の社員又は業務執行社員の総数のうちに占める割合

(法法2、法令7、71、法基通9-2-1)

 

やっぱり難しいですね・・・

解説

 法人税法上の役員は、まずは会社法上の役員が役員であることを明言しつつ、その他に税法独自の役員の範囲について定めています。このその他の部分がいわゆる、みなし役員です。

 では、どのような人がみなし役員となるのか重要な部分を解説していきましょう。

① 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限ります。)以外の者でその法人の経営に従事しているもの

 条文にも書かれていますが、これはいわゆる相談役とか顧問、あるいは取締役とは別にいる代表などと社内外から呼ばれる、または名刺なんかにそういった肩書がある人たちで、経営に従事している人たちです。ちなみに経営に従事しているかどうかは実態で判断されます。本人が否定したとしても、会社の社内外から経営に従事していると認定されているような場合ですと、経営に従事していないという主張は通りづらいでしょう。

② 同族会社の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限ります。)のうち、次に掲げる全ての要件を満たす者で、その会社の経営に従事しているもの

 イ 同族会社とは

同族会社とは、会社の株主等の3人以下並びこれらと特殊関係にある個人または法人によって、その会社が株式会社であれば発行済株式か議決権の50%超、あるいは合名会社合資会社の場合には社員の過半数が、占められている会社をいいます。

 要約すると、会社の3人以下で、その会社の出資の半分以上を有しているので、会社の決定について大体はその人たちの意思がとおるような状態です。

 ロ 使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限ります。)とは

 使用人とは、部長、課長、主任あるいは何の肩書もない役員以外の社員の方々をいいます。職制上使用人としての地位のみを有するとは、取締役部長などという方もいますが、こういった人を除き、純粋な使用人としてのみの肩書をもつひとをいいます。

 ハ 次に掲げる全ての要件を満たす者

 これは株式の所有割合の要件です。条文に書いてあるままなのですが、簡単にいうと株式などの出資で、その人が支配力を行使できるグループ(親族関係など)にいて、かつ5%以上の株式をもっていると対象になるということです。

 ニ 小まとめ

 つまり、同族会社で働いている使用人や一般的な従業員であっても、経営に従事しているとみなされて、そのお父様やお母様などの親族関係でその会社の株式をかなり保有していて、かつ自分も会社の5%以上の株式をもっている場合には、みなし役員として、役員報酬の制限をうけるということです。

大まとめ

 経営に関わっているとみなされる方で、相談役などいわゆる通常の使用人とは異なる職制上の立場が付与されている方や、同族会社の使用人であっても親族関係などで株式の所有割合が一定になる方は、役員報酬の制限の対象になる可能性が高まります。

 みなし役員に該当するかの判定はかなり複雑ですので、事前に税理士に相談することをおすすめします。

役員報酬は変えられない!!

 起業される方などについて会社の税金について、最初に驚くのは役員報酬ではないかと思います。

 「え!!役員報酬って変えられないの!」

 そうです。会社の税について定めている法人税法には、役員報酬の変更には非常に厳しい制約があるのです。

 その趣旨について簡単にいってしまうと、役員報酬を自由に変更してしまえるような状態ですと、会社の利益を自由に操作して、法人で殆ど税金を払わないなんて状態がおきてしまうこと防ぐ目的があるわけです。

 では、まずは役員報酬、つまり役員のお給料が、会社の経費(法人税法上は損金といいます。)として認められるための要件をご説明します。役員報酬については法人税法34条に定められているのですが、税法上の用語を理解していないと読むことができず、かなり難解な条文となっておりますので、中小企業の社長にとって重要と思われる部分を解説していきます。

解説

 まず法人税法34条についてまず役員報酬は、金銭の支出による単純なお給料だけではなく、経済的な利益を含むことを理解してください。経済的な利益とは、例えば会社が役員に対しての貸付金を免除した場合だったり、あるいは会社が役員自身の責任で起こした事故の損害賠償金を肩代わりしたりといった時に、役員がうける利益などをいいます。

 法人税法34条では、次の3つの要件のすべてをクリアすることで役員報酬を会社の損金(いわゆる経費)とすることを認めています。

① 1項基準

 その役員報酬が、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の要件を満たす業績連動給与(これは中小企業にはあまり関係がないので省略します。)であること。法人税法34条1項に定められているため、これをいわゆる1項基準といったりします。

では定期同額給与、事前確定届出給与とは何でしょうか?

定期同額給与・・・一般的にはその会計期間の開始の日から3ヵ月以内に株主総会により決議されるもので、各支給月における支給額が同額である給与

事前確定届出給与・・・いわゆる賞与ですが、利益操作につながらないよう支給時期及び支給額を事前に税務署に届出しなければならない。届出書の提出期限は株主総会による決議の日から1か月以内とその会計期間開始の日から4か月以内のいずれか早い日。新たなに設立した法人については設立の日から4か月以内。

 つまり毎月のお給料は同額を支給すること、賞与などについては事前に税務署に届出をだすことが求められています。役員には利益還元的な賞与は認められない、ということですね。

 ただし主に二つ例外があります。

 ①臨時改定事由・・・役員の役職の変更などにより定期同額給与を変更する場合。役員報酬の変更をする役員の役職の変更が定款や株主総会決議等により客観的に判断できることが重要です。租税回避が目的であると判断されると認められませんので注意が必要です。

 ②業績悪化改定事由・・・業績悪化を理由に役員報酬を減額する場合。自分の会社または得意先の会社の業績に悪化が著しく悪化で役員報酬の減額も利害関係者との関係性からやむを得ないような状況です。単に、資金繰りの悪化や、業績目標に達しないなどの理由では認められません。

 臨時改定事由又は業績悪化改定事由に該当にすれば、毎月のお給料を変更することも可能ですが、こちらの判定には客観的にその状況を税務署に理解してもらう必要があり、慎重な判断が必要になります。

② 2項基準

 その役員報酬が不相当に高額でないこと。法人税法34条2項に定められているため、これをいわゆる2項基準といったりします。
 とはいえ、不相当に高額といわれても、どこからが不相当であるかなど曖昧でわからないと思います。
 

 不相当に高額であるか、どうかについては2つの基準があります。

形式基準

 形式基準では、株主総会や取締役会等で決定された役員報酬の上限額を超えていないかどうか、で判断されます。役員報酬は一般的には株主総会等の決議に関する議事録に役員報酬について定めるのですが、場合によっては定款などに役員報酬の限度額を定めている場合があるので注意が必要になります。そもそも設定した目的はコンプライアンスとか利害関係者に対する配慮であったりはするのですが、株主総会や定款に定めた限度額を超えていると判断されると、越えた部分は不相当に高額とみなされます。

実質基準

 実質基準では、その役員の職務内容や会社の収益、従業員に対する給与の支給状況、類似法人の役員報酬の支給状況等から、支給している役員報酬が不相当に高額となっていないかどうか、で判断されます。 国としては極端な租税回避を防止するための基準ですが、客観的な基準はなく、税務調査時の判断ということになります。
 

 しっかりと売上や利益をあげている会社の役員の役員報酬が高い分にはあまり問題がありません。

 問題になりやすいのが、会社が多額の赤字を計上しているのに役員に高額な報酬が支給されている場合や、非常勤の役員(特に親族)に対して役員報酬を支給している場合は、税務調査で勤務などの実態が論点となりやすく、役員報酬が適正であるか、前もって検討しておくことが必要です。

③ 3項基準

事実の隠蔽や仮装するような経理をしていないこと。

法人税法34条3項に定められているため、これをいわゆる3項基準といったりします。

これはごく単純な話で、ウソや事実と異なる理由によって役員報酬を支給している場合には認めません、ということです。

そもそも支給している実態がないお給料などがこれに当てはまります。帳簿の動きだけで支給しているように見せかけても認めません、ということです。

まとめ

 役員報酬は3つの要件を満たす必要があることについて説明してきました。

 一般的な毎月支給されるお給料については3か月以内には決定した支給額を支給し、いわゆる賞与の場合には届出をした支給額を支給時期に支給しなければなりません。これを守らない場合には、税務調査時にそれが発覚すると、これらの役員報酬が部分的またはすべて否認されることとなります。

 さらに、2項基準では不相当に高額ではなく、3項基準では偽りや仮装経理でないことが要件になっています。

 役員報酬が否認される場合には、否認された部分の報酬は法人税の課税所得となり利益がでれば否認された部分の法人税を追加で支払わなければなりませんし、すでにお給料として計上している部分の所得税は減額等なく変わりません。法人税法上で役員報酬が制限されていたとしても、実際にお給料が出ているのなら所得税は払わなければいけないわけです。役員報酬が否認されてしまうと、税金上はかなり大きな負担になることがおわかりになると思います。

役員報酬への対策はどうすればいい?

 このように厳しい制限のある役員報酬ですが、経営者にとってもっとも厄介なのは事業年度のはじめに決めた金額を動かせないということではないでしょうか?

 「今年、1年の成績がどうなるかなんてわからない?」と。
 その1年の業績に対して役員報酬が多すぎれば会社には多額の赤字が計上され、金融機関に借入などがある場合には信用が落ちるでしょうし、また役員報酬に課せられる社会保険料、所得税、住民税などの税負担により資金繰りが悪化する可能性があります。とはいえ、その1年の会社の業績に対して、役員報酬が少なすぎれば、会社には多額の法人税が課せらます。その翌期以降は法人税を引かれた後の現金から役員報酬をはらい、ここから社会保険料、所得税、住民税などがひかれていくと、稼いだ現金のうちかなりの金額が税金でひかれてしまうことになりかねません。

 こういった事態を少しでも緩和するためには、決算期にはしっかりと過去のデータを照らし合わせて、限られた情報のなかでもしっかりと会社の業績予測をおこなっていくことです。会社の毎月の試算表をしっかりと整理していけば、業績予測や適正な役員報酬の算定のために必ず有用な情報になります。

 臨時改定事由又は業績悪化改定事由に該当し、会社の状況に合わせてお給料を変更できたのに見過ごしたため、融資対策や不必要な税負担で会社をさらに窮地に陥らせることもありえます。

 またこれに加えて、そもそも役員になる人について税法独自の基準があるので注意が必要です。これを法人税法では、みなし役員といいます。みなし役員についてはこちらの記事をご参照ください。

 【特殊!!会社のみなし役員

 会社の税金について定めている法人税法のなかでも難解な条文になっております。判断に迷うような場合には税理士に相談されることをオススメします。

自己資金が足りない!!

「創業融資の審査は難しすぎる~創業融資の審査ポイント(5)~」でも述べましたが、創業融資の審査は「創業する事業の業務経験」と「自己資金」が非常に重視されます。

今回はそのうち自己資金について説明します。

 なんで自己資金が必要なの?

自己資金の要件についてはかなり緩和された印象がありますが、従前は投資額1/3が必要だったところ、急に1/10でいいのかというと、なかなか難しいところではあります。  そもそも何故、金融機関が「自己資金」を重視するのかというと、それは創業した後の事業の財務基盤の強さをみるためという部分もあるのですが、むしろ創業者の創業に対する準備や覚悟をみているという点が強いです。つまりは、自分の事業にどれだけの資金の準備をして、どれだけ使うのか、ということです。お金は全てではないのは当然ですが、お金をしっかりと用意するのが大変だからこそ、自己資金の有無は説得力をもつわけです。

とはいえ、なかなかお金を貯めるのが難しいというのも事実です。特に、創業を考えるような方々は、手に職をつけるような技術職や専門職にお勤めの場合が多いのですが、そこでの就業環境は修行して手に職をつけながら生活していくという側面が多々あり、そこで資金を蓄えられるか、というとなかなか難しいのが現実ではないでしょうか。

自己資金が足りない場合の対策

 上記のような理由があり、金融機関のなかでの自己資金とは「創業者が自分で働いて、毎月貯蓄を積み上げてきた金額」を基本的な定義としています。ですので、自己資金の蓄え方も重要になります。金融機関は審査において、通帳の原本を確認しながら、自己資金の成り立ちを確認していきますので、いきなり現金をもってきて「これが自己資金です。」というのは「見せ金」を疑われ、自己資金としては認められづらいです。

 そこで自己資金が足りない場合の対策をいくつかお伝えします。

親族からの贈与

 近年、日本政策金融公庫では身内からの贈与も自己資金として認めてくれるようになってきています。金融機関の担当者は自己資金を通帳で確認するので、一時的にお金が増えるのは「見せ金」を疑われます。そのお金をしっかりと預金口座にいれ、贈与契約書などを交わして、お金の出所を明らかにし、間違いなく創業事業につかえるものなのだと証明する必要があります。

みなし自己資金の活用

 本来、自己資金とは手持ちの預貯金などを指しますが、創業などにあたりすでに経費の一部を支払ってしまっている場合はよくあるかと思われます。よくあるケースとしては、不動産の賃貸のための敷金保証金や、内装費、機械設備などの購入金額、事業に欠かせないような権利の取得費用などです。

 例えば、手持ちの預金が500万円で、すでに事務所などの賃貸のために敷金保証金を200万円、複合機や事務所でつかうオフィス用品に100万円ほど、その他事業に必要な権利関係のために200万円ほど支出していた場合には、手持ちの自己資金500万円に加えて、これまでに支払った合計金額500万円(200万円+100万円+200万円)がみなし自己資金として認められます。

 もちろん口頭だけで説明してもなかなか信用はえられないでしょうから、創業に必要な経費の領収書や請求書類は必ず保管しておきましょう。

現物出資

手持ちの預貯金などがない場合には、自分のもっている資産を会社に資本金として差し入れることができます。これを現物出資と言います。

 創業者の持っている車両や個人事業者時代の商品などがよくあるパターンです。

 ただし、主に以下のような注意点もあります。

 ①現物出資できるものは何でもよいわけではなく、貸借対照表にのせられるものでなくてはならない。創業者やその他の個人の役務の提供は認められない。

 ②出資額が500万円を超える場合には、弁護士、税理士、会計士などの鑑定が必要になる。

 ③出資は出資者から会社への譲渡として扱われるので、場合によっては出資者に所得税がかかる。

 現物出資額が500万円以下であれば、手続きもそれほど煩雑ではないので、自己資金に不安がある方におすすめです。

制度融資の利用

 上記の方法を検討しても自己資金が厳しいという方は、制度融資のご利用を考えるべきでしょう。制度融資は1000万円の融資までは自己資金の要件を定めていません。

 ただし、要件では自己資金がなくとも申込可能ですが、現実的には思ったような融資の条件を認めてもらうにはなかなか厳しいということを留意してください。

まとめ

 「自己資金」は緩和されたといっても金融機関にとって極めて重要な判断材料です。しかしながら、「事業の業務経験」やビジネスそのものの収益力の高さなどの魅力をつたえることができれば予定通りの融資条件を引き出すことも十分可能です。

 あるいは少し自己資金に不安がある場合には、融資の申込みを一度保留して、少しの間待つことができるのであれば、自己資金の蓄積に備えるというのも現実的な手段ではあります。

創業融資の審査は難しすぎる⁉ ~創業融資の審査ポイント(5)~

 創業融資のポイントとして、創業融資の審査ポイント(1)創業融資の審査ポイント(2)創業融資の審査ポイント(3)創業融資の審査ポイント(4)で長々と述べさせていただきました。

 人によっては創業融資の審査は自分にはちょっと厳しいのではないかなぁ、と思われた方もいらっしゃるのかもしれません。また他の人から創業融資は審査が厳しいよ、また融資は滅多に受けられないよ、みたいなお話を聞いたことがある人もいるかもしれません。

 全く不安がる必要はありません。実際に創業融資でどの程度の確率で融資が実行されているかまでは明確なデータはありませんが、近い過去の支払いなどで未払いや自己破産などの大きな問題がなく、しっかりとした事業計画をお持ちで、そのための業務経験を積まれている方についてはかなり高い確率で融資は実行されます。

 それではまずそもそも金融機関が融資にあたりどのような考えに基づくのかをご説明します。

融資の基本5原則

 金融機関は、融資の審査にあたり融資の基本5原則というものを重視します。これは創業融資だけではなく、事業に対する融資全般についてです。

 融資の基本5原則とは、安全性の原則・収益性の原則・成長性の原則・流動性の原則・流動性の原則の5つからなります。

①安全性の原則

 金融機関としては融資したお金を返済してもらわなければ、その金額は貸し倒れとして融資した金融機関の損失となります。金融機関は公共的な要素が強いのですが、営利を追求する組織でもあります。株主やその組織に従事する人々に対して利益を還元することで成り立っています。債務不履行による損失はそういった利益を圧縮するので、金融機関は当然ですが、融資に対して慎重な姿勢で挑みます。

 創業融資などについては日本政策金融公庫や制度融資が行うもので、損失が生じても金融機関はその融資額については直接的な被害はありません。ただだからといっていい加減な審査をすれば信用問題に発展し、金融機関としての機能を疑われ、立場が危うくなります。
 またその融資額が保証されていたとしても、その融資の実行までの労力までは保証されませんので、いずれにせよ金融機関にとって融資の安全性は非常に重要です。

②収益性の原則

 金融機関は株主や従業員のために利益を出さなければなりません。

 そのためにすることは、「金利を引き上げる」「融資額を増やす」「貸し倒れ率を下げる」「調達コストを下げる」の4つが大きなポイントになります。

 例えば、単純に金利をあげるといっても、高い金利であれば顧客はその金融機関からの融資はさけるでしょう。そういった場合には信用力が低いような事業に対して、少し高めの金利で納得してもらう、などという企業努力をします。
 この点については、金融機関によって考え方がかなり異なります、融資額の大きさを重視するのはメガバンクなどでしょう。大きい金額の融資を実行することで、金利は低くとも信用力の高い法人への融資額の大きさで利益を確保します。

 制度融資などを積極的に行う信用金庫では信用力がやや低い創業した事業などへ手厚くサポートや貸し付けを行うことで、やや高めの金利を設定しています。

③公共性の原則

 銀行は一企業であると同時に、日本経済に対して大きな影響力を持つ企業でもあります。

 いわゆる反社会勢力や問題になっているような悪徳企業、詐欺などを行う企業にどんどんお金を融資してしまったら・・・日本全体に悪影響を及ぼします。

 そのため金融機関は一企業でありながら公共性も担保しなければならないのです。 融資審査の中で、反社会勢力とのかかわりなどが明るみに出れば、審査は通りません。金融機関は独自の調査で反社会勢力と関わりの強い業態や人物をピックアップおり、場合によっては思わぬところで審査が通らないということはありえます

④成長性の原則

 金融機関は顧客の企業が成長していけば、金利を増やさなくても、融資額が大きくなっていくことで、利息収入を増やすことができます。銀行は、金利を上げなくても、融資している金額が大きくなれば利息収入が増えるのです。顧客の成長と返済実績にともない、さらに大きな融資をおこなっていけば金融機関にとっては好循環を生み出せます。

 銀行が融資した企業に対して顧客の紹介や経営面のアドバイスをするのは「企業の 成長が銀行の利益につながる」ことを理解しているからです。

⑤流動性の原則

 流動性というのは「現金としていつでも使える資金の割合」のことです。

 金融機関にとっては長期の融資はいつでも使える資金ではなく流動性が低いというデメリットがあります。まず顧客の倒産リスクは時間がたつほど上がりますし、融資の基となる資金の調達コストにもあがりかねません。

 短期融資ではその流動性のデメリットを緩和することができます。

 この「流動性の原則」のため、企業の信用力がついてくるまでは長期の融資は審査が厳しくなり、短期の融資の方が審査に通りやすくなっています。

創業融資の審査ポイント

 それでは上記の「融資の基本5原則」をふまえた上で、金融機関は創業融資にあたり最も重視するポイントを端的にいえば、「創業する事業の業務経験」と「自己資金」です。これまで創業融資の審査ポイントとして、説明してきたポイントも極論をいってしまえば、その大部分はこの2点の審査へと帰結されるといっても過言ではありません。これを融資担当者は「創業への準備」又は「企業への準備」というような表現をします。

 自己資金について日本政策金融公庫はかつて投資額の1/3程度が要件になっていましたが現在は投資額の1/10からとっており、中小企業保証協会が保証する制度融資では自己資金の要件はありません。とはいえ、自己資金が全くない、または投資額に対して少なさすぎるとみられてしまうと、「創業への準備」又は「企業への準備」への姿勢が疑われ、良い評価にはつながりません。

 しかしながら、融資が実行される方のすべてがこれまで述べてきた審査のチェックポイントの全てを問題なく満たしているわけではりません。むしろそういった方は融資のお申込みを希望される方の全体の割合では少数といってもよいです。感覚としては、審査にあたりまったく問題ないだろうという人が2割程度、これはお手伝いしても審査は無理だろうなという方が2割、しっかりとした審査への準備をしていけば可能性があるだろうという方が残りの6割程度といった割合でしょうか。

 これまで審査のポイント述べてきた部分のどれかが弱い、欠落していたとしても、その他の部分の強みでカバーすることは可能です。

 例えば、自己資金が不足又は全くない、あるいは創業者ご自身の財務状況で負債が多額にあるなどといった場合でも、事業の業務経験がしっかりとしていてビジネスの内容に希望もてれば金融機関は前向きに検討してくれます。

 あるいはその逆に、やや事業の業務経験に不足が感じられるような場合にも、自己資金や財務状況で潤沢な資金があることを理解してもらえれば金融機関から高評価をえられる可能性が高いでしょう。

 創業融資の審査には明確な基準がないといわれています。つまり審査のポイントは各担当者が一方的な減点方式ではなく、良い部分もみてくれる加点減点方式でバランスをとっているのが実態ではないかと想定しています。ただし、融資の5大原則をみてみればわかるように、公共性の原則に触れるような絶対にダメなポイントも存在します。

 こういった基準のつかめなさが創業融資をうけるのは難しいという印象をあたえがちなのですが、決してそんなことはないので、ぜひとも積極的に活用していきましょう。

経営者の財務状況で重要なポイント ~創業融資の審査ポイント(4)~

 創業融資の審査ポイント(1)でお伝えしたとおり、創業融資の審査ポイントは「事業の収支見込み」「経営者の能力」「経営者の財務状況」の3点に大別できます。ここではそのうち「経営者の財務状況」について説明します。

 金融機関が経営者の財務状況を審査の対象にするのには概ね2つの理由があります。

 一つ目は、起業後の資金的なゆとりのためです。起業はなかなか利益が上がらずに事業の資金繰りは厳しくなります。いざというときには事業に経営者自らが資金を補填できる状態であれば、事業を継続する能力が高く評価されます。逆に債務の支払いが多いような状態ですと、事業から多くの利益が生じる必要があり、事業を継続する能力について危ぶまれます。

 二つ目は、債務や公共料金などの支払の状況を確認することで、借入した債務を期日にしっかりと返済するしっかりした人であるかを審査します。金融機関は会社の財務状況を逐一確認しているわけにはいかないので、毎月の支払いを滞りなくすることがその会社の状況を確認できる重要な手掛かりになります。支払いに毎月遅れるような人ですと、金融機関としては取引がしづらい人とみなしますし、やはり毎月しっかりと期日までに支払いをする人はしっかりとしていて事業の運営もできる人だ、とみています。

 そこで「経営者の財務状況」についての主な審査ポイント以下のとおりです。

①資産がどの程度か

 資産が多い状態のほうが、事業が軌道にのるまでの期間を乗り越えやすくなるので、事業の継続能力が高いとみなされます。不動産や金融資産などがあれば積極的に開示することで希望通りの融資条件を引き出す期待値があがります。

 またその他の審査ポイントに不安がある場合などには、同意をえられた同居親族の資産状況などを開示するのも有効に働く場合があります。

②負債がどの程度か

 これは①とは逆で、負債などの支払いが沢山ある場合には、事業を早く軌道にのせて、その利益から負債を返済しなければならないとみなされますので、多額の支払いがある場合にはマイナスの評価になりやすくなります。

 よくある負債の支払いは、過去の借入金、住宅ローン、カードローンです。

 ただし、後述しますが、毎月の支払いがしっかりと行われていて、かつ事業の資金繰りを圧迫するほどに多額とみなされなければ気にしすぎることはありません。特に住宅ローンなどは資産価値のあるものに対する負債ですので、マイナスの評価になりづらくなっています。

 また負債を隠したほうがいいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、金融機関は融資の審査にあたり、「個人信用情報」を取得します。

 「個人信用情報」とは、銀行、信用金庫、クレジットカード会社などが加盟して、個人の利用状況や支払い状況を情報として蓄積するシステムです。CICなどが代表的な機関です。

 その機関に記録されている情報については隠匿することはできません。安易に隠すことは、「この人は信用できない。」という印象を与えるだけなのでおすすめできません。

③支払いは期日通りに行われているか

 公共料金、借入金、税金などの支払いを滞りなく、支払っているかが確認されます。これは創業者が信用できる人物であるかが審査されています。

 もしも支払いに遅れがある、あるいは不払いになっているようなものがあると、先述した「個人信用情報」に記録されている可能性があります。

 個人信用情報は本人であればCICなどの機関から取得をすることができます。気になることがあれば、まずは一度、ご自分の信用情報を調べてみてみることをおすすめします。

創業融資の審査ポイント(5)

経営者の能力で重要なポイント ~創業融資の審査ポイント(3)~

 創業融資の審査ポイント(1)でお伝えしたとおり、創業融資の審査ポイントは「事業の収支見込み」「経営者の能力」「経営者の財務状況」の3点に大別できます。ここではそのうち「経営者の能力」について説明します。

  事業の業務経験

 日本政策金融公庫の創業計画では、こちらの欄で創業者の事業経験を確認しています。

日本政策金融公庫 創業計画書の経営者の略歴等

 金融機関の担当者は創業者の創業しようとする事業に関する業務経験をとても重視します。言い換えれば、創業しようとする事業に関りがある業務経験がなければシビアな評価をうけることを覚悟しなければなりません。
 金融機関としては「創業する事業の経験があるほうが事業は成功する確率が高く、未経験の事業はうまくいかない。」という経験則に基づく評価です。
 創業する事業の業務経験が長く、店長や役職でマネジメントの経験がある場合にはより前向きな評価につながるでしょう。
 とはいえ、事業の業務経験が長くなければ全くダメなのか、というと、そういうわけではなりません。


 フランチャイズ加盟店契約でのトレーニングなどはしっかりと事業経験として認められますし、場合によってはアルバイトなども事業経験として認められる場合があります。
 例えば、小売店などを創業しようとする創業者の事業経験として、IT関連の会社での事業経験が長く、創業しようとする事業の業務経験が1年程度だとします。現代はネット上での小売販売はごく一般に行われていますし、店頭販売にしても商品などのネット上での戦略的な広告は極めて重要になっています。ITに強いというのはむしろ強みとして前面に押し出すべき業務経験ということになります。
 重要なのは創業のコンセプトに合致した業務経験を積んでいるのか、ということです。


 これは創業者からすると、創業計画書作成の前段階、つまり自分の事業計画を思案している頃から考えていることが殆どなのかもしれません。つまり事業ありきではなく、自分の経験ならどんな事業ができるか、という発想になります。同じ飲食店を始めるにしても、ずっと和食のお店で厳しい修行をやってきた方と、様々な業務経験の中に飲食店経験がある方では目指すべきお店の方向は異なってしかるべきですし、それにより利益を生み出す仕組みも異なってきます。
 創業計画書作成の前の段階からしっかりと自分の過去を振りかえり、自信をもって自分の業務経験をアピールしていきましょう。

営業や接客をできるか


 創業して間もない創業者は会社のほぼすべてのことを自分でできなくてはなりません。その中には営業や接客もあります。融資審査の面談の場は、金融機関にとっては、創業者と直接対面し、営業や接客をできる人であるかを見極める唯一のチャンスといっていいです。
 業種にふさわしい雰囲気であるか、常識的な態度ができるか、会話のキャッチボールがしっかりとできるかなどがみられています。

事業への覚悟と熱意


  日本政策金融公庫の場合、事業への熱意は創業の動機などに記載された情報を基に評価します。

日本政策金融公庫 創業計画書 創業の動機欄

 3行程度の短い行数ですので、当然それだけではわかることが限られます。そのため融資担当者は、創業者の事業への熱意や経営者としての適性について、口頭での質問などで確認し評価を補足していきます。場合によっては、すこし意地悪な質問をすることもあるかもしれません。


 ここで大切なことは、事業への熱意については、事業を始めるに至った自分の気持ちを伝えることも大切ですが、その事業が事業として成立するという情熱をアピールすることを重視しましょう。
 例えば、高齢者をターゲットにした小売店などを始めるとします。その場合、「高齢者の方々が普段の買い物なので苦労している姿をみて、何かお役に立てないか。」という表現だけで熱意を訴えても足りないでしょう。金融機関はあくまでも融資先の事業が利益を生み出し、そのお金で返済をいただかなければなりません。例えば、ここに「小売店など販売する商品の仕入先が確保できていて、自分には運送会社での宅配ドライバーなどの経験があり、高齢者の方々が欲しいものを欲しい時にお届けする事業が成立可能だと判断したため事業を開始しました。」などと付け加えることができることが大切です。

 「どうしてわざわざ意欲を口頭で丁寧に説明しなければならないのだろう?」と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。これまで創業計画書の他の部分で数値や自分の経験などについては細かく説明するわけですし、そもそも意欲がなければ借入までするリスクを冒して創業しないだろう、と。
 私自身もそう思っていました。
 ただ創業融資をうけて創業できたもののすぐに事業が回らなくなってしまい、倒産又は実質休眠状態に陥ってしまう会社は、決して多くはないのですが一定数あります。
 もちろんそこには様々な要因があるのですが、「あれ、どうしてこの人はこの事業を始めてしまったのだろう?」と根本的な意欲に対して疑問を感じてしまう創業者の方々がいらっしゃるのです。むしろ創業融資をうけてすぐに事業が立ちいかなくなるのはこういった精神的な部分が重要だったりします。
 金融機関もそれを理解しています。
 事業が軌道にのるまではかなり厳しいですし、多くの犠牲を払います。あまりに思うようにいかないと逃げ出したくもなるでしょう。精神論になってしまうのですが、そういった過酷な状況を乗り切るためには、やりきるという意思の強さは必要不可欠です。

 論理的思考と計数感覚


 創業者には経営者としての高度な意思決定と利益を生み出すための数字に対する感覚が求められています。自身の商業計画書の内容について、物事の因果関係をふまえ、相手に論理的な説明ができること。また創業計画書に書かれているような数字について、しっかりと根拠をもって説明していくことが重要です。ここでしっかりと好印象を与えることができれば、人物評価としては問題ないでしょう。

 誠実さ

 金融機関は融資にあたり創業者について知るべき情報を正確にかつ素早く把握していかなければなりません。そのためには素直に正しい情報開示をしていく姿勢が求められます。
 また金融機関は個人信用情報を取得し、創業者の債務状況やその支払い状況などについて確認をします。ここで集めた情報について創業者の方に隠匿するような姿勢が疑われると、誠実さという部分についてはかなり厳しい評価をうけるでしょう。

創業融資の審査ポイント(4)