交際費と寄付金の判断基準について

こんにちは、突然ではありますが、近年の話題で自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件がありましたね。企業がこのパーティ券を購入したとしたら、交際費でしょうか?寄付金でしょうか?​

答えは「どちらにもなる可能性がある」です。​

こちら面白い論点になりますので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

寄付金と交際費

交際費と寄付金の違いとはなんでしょうか。​

一言で言えば「反対給付(対価性)があるかどうか」ということになります。​

ここから詳しくみていきたいと思います。

意義の違いからみる寄付金と交際費

交際費と寄付金の意義を比べてみましょう。​

〇交際費​

「交際費とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のあるもの等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。」​

ただし、次の費用は交際費等から除かれる。​

(1)専ら従業員の慰安のために行われる運動会等のために通常要する費用(∴福利厚生費)​

(2)飲食費であって、参加者一人当たりの支出額が10,000円以下の費用(一定の書類を保存している場合に限る)(∴損金(法人税法上の費用))​

(3)カレンダー等の贈答費用、会議費、取材費として通常要する費用(∴広告宣伝費・会議費・取材費)

〇寄付金​

「寄付金の額は、寄付金、拠出金、見舞金その他いずれかの名義をもってするかを問わず、次の価額をいう。ただし、広告宣伝費、見本品費その他これらに類する費用、交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く」​

(1)内国法人が金銭その他の資産の贈与をした場合​

→その金銭の額、金銭以外の資産のその贈与時の価額​

(2)内国法人が経済的な利益の無償の供与をした場合​

→その経済的な利益のその供与時の価額​

今ご覧いただいた通り、相手のための支出したという点で交際費と寄付金はかなり似ていますね。​

結論何か違うのかと言えば​

支出した相手先が事業関係者等かどうか

その支出に反対給付(対価性)があるかどうか

の2点があるということがここから読み取れます。

事例からみる交際費と寄付金

上記①については相手先との関連性ですので、説明は省略させていただきます。​

ここからは②について事例を使ってみてきましょう。​

◎特定の政治団体の中傷行為等を排除するためにやむなく支出した金員は交際費ではなく寄付金に該当するとした事例​

請求人は、特定の政治団体の中傷行為等を排除するためにやむなく支出した金員は、その支出の経緯や当該政治団体が請求人の事業関係者等に当たらないことから、寄付金や交際費等に該当しないと主張するが、一般に寄付金とは、金銭その他資産の贈与又は経済的な利益の供与のうち、事業の遂行に直接関係のあるもの以外のもの、すなわち、事業の遂行に直接関係ないもの及び事業の遂行との関係が明らかでないものと解され、特定の政治団体に対する本件支出金は、請求人の事業遂行に直接関係ないものであるので寄付金に該当すると認めるのが相当である。​

つまり、今回の事例はそもそも事業に直接必要な支出だったのかという部分で争われています。結果的に事業に必要ないのない(対価性がない)支出ということでこの支出は寄付金になりました。

引用元 (寄付金の範囲 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所)​

次は交際費ではなく外注費ですが、対価性を問われたケースの一つとなります。​

◎外注費として支出した工事代金等につき対価性がなく寄附金に該当するとした原処分の一部を取り消した事例​

《ポイント》​

 一般に、会計帳簿は業務上の金員の動きがそのまま記載されるものであるから、特段の事情のない限り、会計帳簿に記載されたとおりの事実を認めることができるところ、原処分庁が会計帳簿に記載された事実(費用)について対価性がないと認定する場合には、原処分庁がその立証責任を負うことになる。​

 この事例では、請求人が会計帳簿に記載された事実と異なる事実を主張したことから、請求人において、かかる事実の存在や異なる事実を会計帳簿に記載することとなった事情などの特段の事情を立証する必要があるとしたものである。​

《裁決の要旨》​

 請求人は、各事業年度に追加の外注費として支出し損金の額に算入した金員(本件支出金)は、①過去に施工された工事に係る追加の支払を現場名を付け替えて支出したもの、及び②実際の工事対価の支払として支出したものであり、対価性があることから、法人税法第37条《寄附金の損金不算入》第7項に規定する寄附金には当たらない旨主張し、一方、原処分庁は、本件支出金にはいずれも対価性がなく寄附金に当たる旨主張する。​

 上記①に係る本件支出金については、請求人の会計帳簿等に記載された現場と関係がない上、請求人が主張する追加支払に合理的理由や支払うべき特段の事情があったとはいえず、対価性のない支出であると認められることから寄附金に該当する。一方、②に係る本件支出金については、実際に工事が行われており、当該工事に係る対価であると認められることから寄附金に該当しない。​

《参照条文等》​

 法人税法第37条第7項​

こちらは、過去に施工された工事に係る追加の支払と主張したものが合理的理由や支払うべき特段の理由がないために対価性がないとみなされ寄付金となったものになります。​

引用元(寄付金の範囲 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp))

冒頭の条件をもう一度記載すると

支出した相手先が事業関係者等かどうか

その支出に反対給付(対価性)があるかどうか

上記の要件を満たす(説明できる)資料があるかどうかが重要であると言えます。

ここで冒頭のパーティ券の事例に当てはめてみると

パーティーに事業関係者が多く出席する

上記の理由から実際に出席したものである

上記①②が共に認められる場合には出席分のパーティ券代は交際費となり、そうでない場合には寄付金となります。

参考(東京地方税理士会|暮らしと税 (tochizei.or.jp))

まとめ

以上が簡単ではありますが、交際費と寄付金についてになります。

いかがだったでしょうか。

他にもご紹介出来ていない部分や、その他の経費と寄付金の話もございます。

今回の話は実際にも重要な部分で、判断が難しいものになります。

何かございましたらお気軽にご相談下さい。